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マーカウスキー氏のAUMF構想が問う議会の対イラン統制力の行方

by 長谷川 悠人
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トランプ対イラン軍事行動とAUMF論

トランプ政権による対イラン軍事行動をめぐり、米議会の戦争権限が改めて焦点になっています。すでに上院では、ティム・ケイン上院議員らの戦争権限決議が否決され、下院でも同種の動きは力負けしました。そうした中で注目されているのが、共和党のリサ・マーカウスキー上院議員です。彼女は軍事行動の継続そのものは支持しつつも、「本来は議会承認が必要だった」と明言し、Authorization for Use of Military Force、すなわちAUMFの起草と審議を始めるべきだと主張しています。

この立場は一見すると曖昧です。しかし実際には、いまのワシントンで最も現実的な論点でもあります。戦争を止める決議には反対しながら、戦争を続けるなら議会が条件を定めよという考え方だからです。本記事では、マーカウスキー氏の発言がなぜ重いのか、AUMFと戦争権限決議はどう違うのか、そして議会が今からでも主導権を取り戻せるのかを解説します。

マーカウスキー氏が投げたのは「停止」ではなく「統制」の論点です

3月4日の声明が示したのは条件付きの議会関与でした

マーカウスキー氏は3月4日、ケイン氏のS.J.Res.104に反対票を投じたあと、上院の戦争権限決議は「実務的に危うい」と説明しました。彼女の公式声明では、トランプ大統領は本来、イランへの大規模攻撃前に議会の承認を求めるべきだったと認めたうえで、すでに米軍が交戦状態にある以上、即時の攻撃停止を求める決議では現場を危険にさらすと主張しています。

同時に彼女は、そこで議会の役割が終わるわけではないとも述べました。声明には「この紛争の範囲を定義するのは議会の義務であり、AUMFの起草と審議を始めるべきだ」とあります。ここが重要です。つまりマーカウスキー氏は、ホワイトハウスへの白紙委任にも、即時撤収にも与せず、作戦目的、期間、資金、説明責任を議会が文章で縛るべきだという立場を示しています。

だからこそ彼女の立場は共和党内で異質です

3月4日の上院採決では、ケイン氏の戦争権限決議は47対53で否決されました。賛成した共和党議員はランド・ポール氏だけで、マーカウスキー氏を含む大半の共和党議員は反対しました。表決だけ見ると、彼女も党の足並みに並んだように見えます。しかし、採決後の発言内容はかなり違います。NOTUSやAlaska Public Mediaが伝えたように、彼女は「議会に役割がないと受け取られたくない」と強調し、戦費や監督の審査に踏み込む姿勢を見せました。

この差は小さくありません。多数の共和党議員が「大統領には十分な権限がある」と主張する一方で、マーカウスキー氏は「承認は必要だった」と認めています。大統領の行動を全面否定はしないが、事後的にでも議会の明示的関与を求める。この立ち位置は、AUMF論を共和党内から動かし得る数少ない足場です。

戦争権限決議よりAUMFが重いのは、条件を書き込めるからです

戦争権限決議は止める道具、AUMFは縛る道具です

戦争権限決議とAUMFは似て見えて、役割がかなり違います。1973年のWar Powers Resolutionは、議会と大統領の「集団的判断」を求め、議会承認がないまま軍を交戦状態に置く場合の制約を定めた法律です。法解説や条文整理では、大統領は原則として48時間以内に議会へ報告し、60日以内に議会承認を得なければ部隊を撤収させる建て付けになっています。

ただし現実には、この仕組みだけで大統領を止めるのは難しいです。戦争が始まってから撤収を求める決議は、「前線の兵士の手を縛る」という批判を受けやすく、大統領の拒否権もあります。そこで出てくるのがAUMFです。AUMFは軍事行動を追認するだけの白紙委任状にもなり得ますが、逆に言えば、議会が本気なら「対象」「目的」「期限」「地上軍の可否」「定期報告」「資金制限」を明記できる道具でもあります。

今回の争点では、事後承認でも意味があります

「戦争が始まった後の承認に意味があるのか」という疑問はもっともです。ですが、まったく意味がないわけではありません。たとえば、AUMFに核施設限定、地上軍投入禁止、90日ごとの見直し条項、追加資金の個別承認義務を入れれば、政権は作戦の拡大や長期化を自動的には進められません。議会が目標と出口戦略を文章で固定できれば、ホワイトハウスの説明の揺れを一定程度抑えられます。

実際、民主党側でもこの発想は強まっています。クリス・マーフィー上院議員は、戦争権限決議を支持しながら、次の段階としてAUMFを議論すべきだと主張しました。Axiosも、上院民主党が補正予算をてこにAUMF採決を迫る戦略を検討していると報じています。マーカウスキー氏の姿勢が意味を持つのは、こうした民主党側の制度論と接続できるからです。

曖昧なAUMFが招く戦線拡大リスク

もっとも、AUMFには明確なリスクもあります。議会が曖昧な文言で承認すれば、かえって大統領に強い政治的正当性を与え、戦線拡大の口実になる恐れがあります。2001年と2002年のAUMFが長期にわたり広く使われた記憶は、米議会に根強く残っています。マーカウスキー氏自身も2023年には旧イラクAUMFの廃止を支持し、議会権限の回復を訴えていました。だからこそ、新たなAUMFを作るなら、目的と期限を厳密に絞る必要があります。

今後の焦点は、議会が本当に「統制のためのAUMF」を作るのか、それとも採決から逃げ続けるのかです。もし議会がまた曖昧なまま資金だけ認めれば、戦争開始は大統領、費用負担は議会、責任の所在は不明という最悪の構図が固定されます。逆に、超党派で条件付きAUMFか厳格な監督枠組みをまとめられれば、少なくとも対イラン作戦の輪郭は公の場に引き出せます。

マーカウスキー氏が示す条件付きAUMFの分岐点

マーカウスキー氏のAUMF論が重要なのは、トランプ政権の対イラン軍事行動を単に賛成か反対かで切らず、「誰がどの条件で戦争を統制するのか」という本質を突いているからです。彼女は即時停止には反対しましたが、議会承認が必要だったことは認め、いまからでも議会が範囲と目的を定めるべきだと訴えました。

米議会が失ってきた戦争権限を取り戻せるかどうかは、この次の一手にかかっています。戦争権限決議が否決された後に残るのは、無制限の大統領権限か、条件付きのAUMFかという選択です。マーカウスキー氏の発言は、その分岐点がすでに来ていることを示しています。

参考資料:

長谷川 悠人

米国政治・外交

米国政治の内幕を、ホワイトハウスから議会まで多角的に分析。政策決定のプロセスと日本への影響を鋭く読み解く。

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