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クイーンズ廃線跡の未来は公園か地下鉄か両方か

by 長谷川 悠人
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5.6キロ廃線跡の公園化と地下鉄復活

ニューヨーク市クイーンズ区に、60年以上放置された全長約5.6キロメートルの廃線があります。かつてロングアイランド鉄道(LIRR)のロッカウェイビーチ線として利用されていたこの路線をめぐり、2つの構想が長年にわたって対立しています。一方は緑あふれる公園に、もう一方は地下鉄路線として復活させるという計画です。

2026年現在、マンハッタンのハイラインのような公園を目指す「QueensWay」構想が予算を獲得し前進する一方、地下鉄延伸を求める「QueensLink」支持者は強く反発しています。この議論は、都市のインフラ再生における「公園か交通か」という普遍的なテーマを浮き彫りにしています。

ロッカウェイビーチ線の歴史と現在

1877年開業から1962年の廃止まで

ロッカウェイビーチ線は1877年に開業し、クイーンズ区のレゴパークからロッカウェイ半島までを結ぶLIRRの路線として運行されていました。しかし1950年の火災をきっかけに利用者が減少し、1962年に正式に廃止されました。

廃止後、南側のオゾンパーク以南のセクションはニューヨーク市地下鉄A線に編入されましたが、レゴパークからオゾンパークまでの約5.6キロメートルは手つかずのまま残されました。現在、この区間は自然に覆われ、地元の人々が非公式にハイキングコースとして利用する独特の空間となっています。

2つの未来構想が浮上

2010年代に入ると、この廃線跡の活用をめぐって2つの大きな構想が生まれました。「QueensWay」はマンハッタンのハイラインをモデルにした公園計画で、「QueensLink」は地下鉄路線としての復活を目指す交通インフラ計画です。両者は同じ土地を対象としており、長年にわたって対立を続けています。

QueensWay:公園構想の現状

ハイライン型の47エーカーの緑道

QueensWayは、廃線跡を約47エーカー(約19ヘクタール)の緑道公園に転換する構想です。サイクリストや歩行者のための約11キロメートルの遊歩道を整備し、アート作品の展示スペースも設ける計画になっています。レゴパーク、フォレストヒルズ、グレンデール、ウッドヘイブン、オゾンパークといった周辺地域に新たな緑地を提供します。

2022年にニューヨーク市から3,500万ドルの予算が第1期工事に割り当てられました。2025年1月には市が公園の初期デザインを公開し、具体的なイメージが示されています。

市の予算と工事スケジュール

2026年現在、マムダニ市長の予算案には約4,300万ドルのQueensWay関連予算が計上されています。さらに秋には1,400万ドルが追加され、メトロポリタン・アベニューからユニオン・ターンパイクまでの第1期工事は2026年後半に着工予定です。許認可手続きを経て、2028年末までの完成を目指しています。

QueensLink:地下鉄復活構想の訴え

クイーンズ初の南北地下鉄接続

QueensLinkは、廃線を地下鉄路線として復活させる構想です。既存のクイーンズ・ブルバード線を延伸し、M線の新駅を4つ設置してA線と接続させる計画で、実現すればクイーンズ区で初めての南北方向の地下鉄接続が生まれます。1日あたり7万5,000人の乗客を見込んでいます。

さらに注目すべきは、QueensLinkが交通インフラだけでなく33エーカー(約13ヘクタール)の公園スペースも含む「レール・アンド・トレイル」構想である点です。つまり、地下鉄と公園の両立を提案しているのです。

連邦政府の支援と調査

2025年1月、アメリカ連邦運輸省はQueensLinkの実現可能性調査に40万ドルの助成金を交付しました。これは超党派インフラ法に基づく「コミュニティ再接続パイロット助成プログラム」の一環です。QueensLinkの非営利団体は、社会的・環境的・経済的影響を包括的に評価する調査を実施する計画です。

また、地元のジョセフ・アダボ州上院議員が2024年に実施した世論調査では、廃線沿線の住民はQueensLinkを圧倒的に支持しているという結果が出ています。

政治的対立と「両立」の可能性

マムダニ市長の立場をめぐる論争

現在、この問題は政治的な対立の焦点にもなっています。ゾーラン・マムダニ市長は州議会議員時代にQueensLinkを積極的に支持していました。しかし市長就任後の2026年予算案ではQueensWayに予算を配分し、交通活動家から「裏切り」と批判されています。

市の担当者は「現在のQueensWay計画は将来の交通インフラ導入を排除するものではない」と説明しています。しかしQueensLink支持者は、公園が一度でも建設されれば、地下鉄への転換に向けた政治的・物理的なハードルが大幅に上がると懸念しています。

両立案の課題

QueensLinkは「レール・アンド・トレイル」として地下鉄と緑道の両立を提案していますが、実現には多くの課題があります。地下鉄建設のコストはQueensWay単体と比べて桁違いに大きく、MTA(都市交通局)レベルでの推進力も現時点では不足しています。一方で、クイーンズ区の交通格差は深刻で、南北方向の移動手段の不足は長年の課題です。

2026年3月にはコミュニティボード2がM線延伸案を提示するなど、地元からの要望は根強く続いています。

QueensWay着工後に残る地下鉄構想の余地

この問題を考える上で重要なのは、「公園か地下鉄か」という二者択一に陥らないことです。QueensLinkの「レール・アンド・トレイル」構想が示すように、両立の道は技術的には存在します。問題は資金と政治的意志です。

今後の焦点は、QueensWayの第1期工事が始まった後に、地下鉄構想の余地がどれだけ残されるかです。連邦政府の実現可能性調査の結果も注目されます。都市インフラの再生において、短期的な実現可能性と長期的な交通ニーズのバランスをどう取るか、ニューヨークの判断は世界の都市計画に示唆を与えるでしょう。

7万5,000人の移動需要と廃線再生の教訓

クイーンズ区のロッカウェイビーチ廃線跡は、都市における空間活用の難しさを象徴しています。QueensWayの公園計画は具体的な予算とスケジュールで先行していますが、QueensLinkの地下鉄復活構想は7万5,000人の日常的な移動ニーズに応える可能性を持っています。

両構想の行方は、単にクイーンズ区の問題にとどまりません。日本でも各地で廃線跡の活用が議論されており、公園・遊歩道への転換が進む事例が増えています。交通インフラとしての可能性を閉ざさない形での再生をどう実現するか、ニューヨークの経験から学べることは多いはずです。

参考資料:

長谷川 悠人

米国政治・外交

米国政治の内幕を、ホワイトハウスから議会まで多角的に分析。政策決定のプロセスと日本への影響を鋭く読み解く。

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