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UCの大学費用が年5万ドル超、州内学生を直撃する住宅費と教育格差

by 村上 詩織
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州内生にも迫る年5万ドルの年間費用

米国の公立大学は州内出身者なら安い、という常識が揺らいでいます。カリフォルニア大学では2026〜27年度、バークレーの新入生寮生、サンタバーバラの新入生寮生、アーバインの学外居住者について、年間費用の公式見積もりが5万ドルを超えました。

ただし、これは大学から一括請求される「授業料」ではありません。授業料や必須費用に加え、住居、食事、健康保険、教材、交通、日用品まで含む出席費用、いわゆるCOAです。奨学金算定の土台となる数字であり、実際の支出は住み方や援助額によって変わります。

重要なのは、総額を押し上げている中心が授業そのものではなく、大学に通うための生活基盤だという点です。三つのキャンパスの内訳を比べると、公立大学の教育機会が地域の住宅市場に左右される構造が見えてきます。

学費より重い住宅費と三キャンパスの価格差

バークレーで膨らむ寮費と保険料

UCバークレーが示す新入生の年間総費用は、学生寮で5万4674ドル、学内アパートで5万6334ドルです。学外アパートでは4万9692ドル、親族宅から通えば3万9428ドルとなり、住み方だけで最大約1万7000ドルの差が生じます。

学生寮の場合、授業料と大学必須費用が1万8214ドル、住居と食事が2万3640ドル、学生健康保険が5066ドルです。大学へ直接支払う費用だけで4万6920ドルに達し、教材、交通、個人的支出を加えると5万ドル台半ばになります。

実際の寮契約額にも大きな幅があります。標準的な部屋と食事プランの組み合わせは、4人部屋が1万9255ドル、3人部屋が2万725ドル、2人部屋が2万3885ドル、1人部屋が2万6530ドルです。プライバシーを確保しようとすると、年間負担が数千ドル単位で増えます。

ここで注意したいのは、学内アパートが常に寮より安いわけではないことです。食事を自炊に切り替えても、部屋代、光熱費、食材、生活用品を合計すれば、バークレーの標準予算では寮を上回ります。「寮を出れば節約できる」という判断は、物件ごとの条件を見なければ成り立ちません。

アーバインで逆転する学内外の負担

UCアーバインの新入生では、授業料とキャンパス必須費用の合計が2万289ドルです。親元から通う場合の総費用は3万6605ドル、学内居住は4万5206ドルですが、学外居住では5万130ドルに上昇します。

学外居住者向け予算では、住居費だけで2万2541ドルが見込まれています。学内居住の住居・食費相当額より重く、交通費も増えるためです。賃貸物件の広告で示される月額家賃だけでなく、契約期間、敷金、家具、光熱費、通学費を含めなければ比較できません。

一方、親族宅から通える学生は支出を大きく抑えられます。この選択肢を利用できるかどうかは、本人の節約努力より、実家の所在地や家族関係、交通手段に左右されます。同じ州内学生でも、家庭が大学の近くにあるかどうかが事実上の経済資産になります。

サンタバーバラの寮費と周辺相場

UCサンタバーバラが新入生寮生に示す総費用は5万946ドルです。内訳は授業料・学生サービス費1万5588ドル、キャンパス費2085ドル、家賃1万3203ドル、食費1万782ドル、健康関連費4008ドルなどです。

実際の寮料金は食事回数と部屋の人数で異なり、年間2万3900ドルの3人部屋から2万8542ドルの1人部屋まであります。大学の標準予算は平均的なモデルであり、希望した部屋に入れなければ、公式見積もりを数千ドル上回る可能性があります。

周辺の民間市場も安くありません。大学の住宅案内に掲載された相場では、近隣のアイラビスタでワンルームが月2046ドル、1ベッドルームが2458ドル、2ベッドルームが4090ドルです。多くの学生がルームメートを必要とするのは、共同生活を好むからというより、単独では家賃を負担しにくいからです。

三校の数字は同じ物差しで単純比較できません。COAには大学への直接支払いと、本人が市場で支払う間接費用が混在し、夏休みの住居や初期費用が十分に含まれない場合もあります。それでも、住宅の確保が教育費の主要部分になった現実を示す指標としては重要です。

手厚い給付制度でも残る生活費の教育格差

授業料免除後に残る自己負担

UCの「Blue and Gold Opportunity Plan」では、年収10万ドル以下のカリフォルニア州内家庭の多くについて、給付金と奨学金でUC授業料を賄う方針が示されています。2026〜27年度の連邦ペル・グラントも、対象者には最大7395ドルが支給されます。

こうした制度は入学機会を広げますが、「授業料が無料」と「大学生活に費用がかからない」は同義ではありません。住宅、食事、保険、交通、教材などが給付額を上回れば、学生は就労、家族からの支援、貯蓄、融資で不足分を埋める必要があります。

カリフォルニア公共政策研究所によると、家族と同居せず学外で暮らすUC学生では、授業料以外の費用が総支出の61%を占めます。最大限に近い給付を受ける低所得のUC学生でも、想定条件によっては年間約4000ドルの不足が残ります。

4年間で考えれば、この不足は小さくありません。週当たりの就労時間が増えれば、学習、インターンシップ、研究活動への参加機会が削られます。家賃の高騰は家計問題であると同時に、卒業までの時間や就職準備を左右する教育条件です。

食料・住宅不安に表れる学生間格差

UCの2024年学生調査では、学部生全体の48%が食料不安、7%が住宅不安を経験したと報告されています。ペル・グラント対象者では食料不安が61%、住宅不安が9%に上り、平均より厳しい状況です。

人種や家庭状況による差もあります。ヒスパニック系学部生の食料不安は62%、アフリカ系では61%でした。子どもを育てる学部生は64%が食料不安、25%が住宅不安を経験しており、標準的な「単身の寮生」を前提とする予算では負担を捉え切れません。

UC全体の基礎的生活支援は2024〜25年度に約7万7800人が利用しました。バークレーで7651人、アーバインで7550人、サンタバーバラで1万1304人に達しています。名門大学への入学後も、食事や住居の支援を必要とする学生が多数いることを示します。

UC卒業生の68%が学生ローンなしで卒業していることは、給付制度の成果です。しかし、借金を避けるために長時間働いた学生、食費を削った学生、親族宅から長距離通学した学生の負担は、ローン残高には表れません。負債の少なさだけで大学の手頃さを評価するのは不十分です。

移民家庭を分ける申請経路

在留資格も利用できる制度を分けます。一定の就学要件などを満たす学生は、州法AB 540により州外学生向け追加授業料を免除され、California Dream Act Applicationを通じて州や大学の給付を申請できます。

一方、在留資格のない学生は連邦ペル・グラントや連邦ワークスタディーを利用できません。州の制度が穴を埋めても、連邦援助という選択肢が最初からないため、同じ所得水準の市民・永住者世帯とは資金構成が異なります。

申請書の種類、居住資格の判定、GPA確認、保険免除など、複数の手続きを期限内に進める必要もあります。保護者が英語や米国の大学制度に不慣れな家庭では、制度が存在しても情報へ到達できない「申請格差」が生じやすくなります。

大学は合格通知だけでなく、各制度で最終的にいくら残るのかを多言語で示す必要があります。授業料免除の案内だけでは、学生が直面する住宅費や食費、利用できない連邦援助まで判断できないためです。

授業料固定では止まらない住居費上昇の圧力

UCは入学時の授業料を原則として最長6年間固定する制度を採用しています。しかし、家賃、食費、交通費、健康保険料まで固定されるわけではありません。カリフォルニア州の家賃は2026年時点で全米水準を30%以上上回り、2024年には賃貸世帯の28%が収入の半分超を住居に費やしていました。

州の2026〜27年度予算では、UCへの継続的な一般財源支援が前年度比5億3300万ドル増え、基礎的生活、住宅、障害学生支援にも一時的な2000万ドルが盛り込まれました。ただし、運営費の増額がそのまま学生家賃の引き下げに結び付くとは限りません。

今後の焦点は、給付金を増やすだけでなく、手頃な学生住宅を大学がどれだけ供給できるかです。住宅建設が追い付かなければ、援助の増額分が周辺市場の高い家賃に吸収される恐れがあります。通学交通、緊急住居、食料支援、保険手続きまで含めた政策が必要です。

また、COAはあくまで標準的な見積もりです。部屋の種類、契約月数、扶養家族、医療費、物価によって実支出は上下します。5万ドルという境界だけを見るのではなく、誰に、どの費目が、どの時点で発生するのかを継続して検証する必要があります。

家庭が合格通知後に確かめる四つの負担項目

進学先を比較する際は、第一に大学へ直接支払う金額、第二に返済不要の給付額、第三に住宅・食事・交通を含めた間接費、第四にローンと就労で補う不足額を分けて確認することが重要です。「総支援額」には融資やワークスタディーが含まれる場合があり、すべてが値引きではありません。

住宅については月額だけでなく、契約期間、食事プラン、光熱費、敷金、家具、休暇中の滞在条件も確認すべきです。別の医療保険やMedi-Calを利用できる学生は、UCの保険料を免除できるか、免除によって給付額が調整されないかを大学へ確認する必要があります。

移民・混合在留資格世帯では、FAFSAとCalifornia Dream Act Applicationのどちらが適切かを早期に相談することも欠かせません。最終判断では公表された5万ドルをそのまま請求額と受け取らず、各キャンパスの援助通知と現実的な住宅案を組み合わせ、4年間の実質負担を比較する視点が求められます。

参考資料:

村
村上 詩織

移民・難民・教育格差

移民・難民・教育格差など、社会の周縁に置かれた人々の声を丁寧に取材。制度と現実のギャップを浮き彫りにする。

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