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米国の空の旅が危機的状況、DHS閉鎖でTSA職員が無給勤務

by 長谷川 悠人
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DHS閉鎖40日とTSA無給勤務の危機

米国の空の旅がかつてないほど困難な状況に陥っています。2026年2月14日に始まった国土安全保障省(DHS)の予算閉鎖により、空港の保安検査を担うTSA(運輸保安庁)職員約6万1000人が無給のまま働き続けている状態です。閉鎖から40日が経過し、TSA史上最悪の待ち時間が記録されるなど、米国の航空旅行は深刻な危機に直面しています。

春休みシーズンと重なったこの事態は、何百万人もの旅行者に直接的な影響を及ぼしています。なぜこのような状況に至ったのか、そして旅行者はどう対処すべきかを解説します。

DHS閉鎖がもたらしたTSA危機

無給勤務の深刻な実態

DHSの部分閉鎖により、約6万1000人のTSA職員が「必要不可欠な職員」として勤務を続けていますが、2月中旬以降、一度も満額の給与を受け取っていません。TSA職員の平均年収は約4万7000ドル(約700万円)と連邦政府職員の中でも低い水準にあり、無給勤務の打撃は特に深刻です。

報道によると、一部の職員はガソリン代を節約するために空港の駐車場で車中泊をしたり、献血・血漿提供で生活費を工面したり、副業を掛け持ちしている状況です。こうした過酷な環境が、離職と欠勤の急増を招いています。

職員の大量離職と欠勤

閉鎖開始以降、450人以上のTSA職員が辞職しました。さらに深刻なのは欠勤率の急上昇です。3月23日には全米で3450人以上が欠勤し、欠勤率は約12%と閉鎖以来最悪を記録しました。

主要空港の状況はさらに深刻です。ヒューストンのジョージ・ブッシュ国際空港ではTSA職員の半数以上が病欠を申請し、アトランタのハーツフィールド・ジャクソン国際空港とニューオーリンズのルイ・アームストロング国際空港では、約3分の1の職員が欠勤しています。

空港で何が起きているのか

TSA史上最悪の待ち時間

TSAの高官は議会証言で、現在の保安検査の待ち時間が「TSA史上最悪」であると認めました。一部の空港では4時間半以上の待ち時間が発生しており、空港当局は搭乗3時間以上前の到着を推奨する異例の事態となっています。

特にニューヨークのJFK国際空港、アトランタ、ヒューストン、ニューオーリンズなどの主要ハブ空港で混雑が顕著です。春休みの旅行シーズンと重なったことで、混雑は一層深刻化しています。

ICE職員の空港投入

トランプ大統領はTSAの人員不足を補うため、移民税関捜査局(ICE)の職員を空港に投入する措置を講じました。トム・ホーマン国境管理責任者が指揮を執り、ICE職員がID確認、列の誘導、荷物のトレイ載せ補助などを担当しています。

しかし、TSAの保安検査員の育成には通常4~6か月の訓練が必要であり、年次認定も求められます。ICE職員の投入は応急措置に過ぎず、根本的な解決にはなっていないとの指摘が出ています。ヒューストンの空港では、ICE職員が長時間待機する旅行者にペットボトルの水を配る場面も見られました。

航空業界全体への波及

燃料価格の高騰と減便

空港のセキュリティ問題に加え、イラン情勢の緊迫化による原油価格の上昇が航空業界を直撃しています。ジェット燃料価格がここ数週間で倍増し、ユナイテッド航空は今後6か月間で一部路線の減便を発表しました。

燃料コストの上昇は航空券価格に転嫁される可能性が高く、旅行者は保安検査の遅延と運賃の上昇という二重の負担を強いられる状況です。

旅行者の不安と対策

こうした状況を受け、旅行者の間では「フライト・アンザイエティ(飛行機不安)」が従来の意味を超えて広がっています。かつては飛行機に乗ること自体への恐怖を指していましたが、現在では空港に行くこと自体がストレスの源となっています。

旅行の専門家は、以下の対策を推奨しています。出発の3~4時間前に空港に到着すること、TSAプレチェックやクリアなどの優先検査プログラムに登録すること、そしてリアルタイムの空港待ち時間情報を確認してから出発することです。

DHS予算交渉難航とTSA回復長期化

DHSの予算をめぐる議会での交渉が続いていますが、合意の見通しは不透明です。閉鎖が長引くほどTSA職員の離職は加速し、保安検査体制の回復には数か月を要する可能性があります。一度辞職した経験豊富な職員の補充には、採用から訓練まで半年近くかかるためです。

航空業界の団体や旅行業界からは、早期の予算成立を求める声が強まっています。旅行者の安全と利便性の両立は、政治的な対立を超えて取り組むべき課題です。

TSA離職と燃料高騰が迫る旅行対策

DHS閉鎖に伴うTSA職員の無給勤務と大量離職は、米国の航空旅行を危機的な状況に追い込んでいます。TSA史上最悪の保安検査待ち時間、ICE職員の応急投入、燃料高騰による減便と運賃上昇が重なり、旅行者の不安はかつてないレベルに達しています。

当面の間、米国での空の旅には十分な時間の余裕と事前の情報収集が不可欠です。議会での早期の予算合意と、TSAの体制回復が強く求められています。

参考資料:

長谷川 悠人

米国政治・外交

米国政治の内幕を、ホワイトハウスから議会まで多角的に分析。政策決定のプロセスと日本への影響を鋭く読み解く。

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