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DHS閉鎖で誰に給与が出るのか、払われる職種と無給の境界線は

by 長谷川 悠人
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DHSで「全員無給」が誤解である理由と3区分の全体構造

米国の国土安全保障省、DHSの一部閉鎖では、「政府職員は全員が無給になる」という理解は正確ではありません。実際には、資金源が残っている部署、生命や財産の保護を理由に勤務継続を命じられる部署、大半の業務を止めて休業に入る部署で扱いが分かれています。その結果、同じDHSの職員でも、普段どおり給料が出る人と、出勤を続けながら無給の人、そもそも自宅待機で無給の人が並存しています。

しかも3月末には、トランプ大統領がTSA職員に限って緊急の給与支払いを指示し、格差はさらに複雑になりました。何がこの差を生んでいるのかを理解するには、政争そのものより、米国の予算法と人事区分を見る必要があります。この記事では、誰が支払対象なのか、なぜその線引きになるのか、そしてこの構図が安全保障と行政運営に何を残しているのかを整理します。

給与が出る人と出ない人の分かれ目

「免除」「例外」「休業」の3区分

政府閉鎖時の基本ルールは、OPMの2026年1月ガイダンスに整理されています。対象業務は、まず資金が別枠で確保されていて閉鎖の影響を直接受けない「exempt」、次に法令上または生命・財産保護のため勤務継続が必要な「excepted」、最後に停止される「shutdown furlough」に分かれます。重要なのは、excepted職員は仕事を続けても、代替財源がなければその場では給料が出ない点です。

今回のDHS閉鎖で起きている混乱は、この3区分が部局ごとにかなり違うことにあります。Semaforが2月25日に伝えたホワイトハウス集計では、DHS職員のうち約14万人がなお給与を受け取り、約12万人が無給で働いていました。支給継続組には、税制・和解法由来の資金が使える法執行部門が多く、無給組にはTSAや一部の災害・サイバー・文民部門が集中しています。

代替財源を持つ法執行部門

支払いが続いている代表例は、CBP、ICE、沿岸警備隊の現役軍人です。Semaforによると、給与継続組には約5万7000人のCBP職員、約2万5000人のICE職員、約5万1000人の沿岸警備隊員が含まれます。背景には、2025年の大型法で積み増された移民・国境関連資金や、軍人給与を維持するための別財源があります。

Federal News Networkは2月26日、CBPが和解法由来の資金を使って5万7600人超を「exempt」として支払う方針だと報じました。通常ならCBPの多くは閉鎖時に「excepted」となり、働きながら無給になるはずですが、今回は別財源があるため有給勤務へ切り替わっています。CBS Newsも3月17日、沿岸警備隊では約4万1200人の現役軍人に給料が出る一方、約9300人の文民職員には出ていないと伝えています。つまり線引きは「制服組かどうか」だけでなく、「どの財布から払えるか」によって決まっています。

無給勤務と部分救済の実態

TSA、FEMA、CISAに集中した無給勤務

無給勤務の象徴がTSAです。Semaforは、約4万2000人のTSA保安検査官と、約1万9000人の同機関の他職員が無給だと報じました。ホワイトハウスも3月20日時点で、10万人超のDHS職員が無給勤務に置かれ、その中に5万人のTSA職員が含まれると説明しています。数字に幅はありますが、TSAが最大の無給集団である構図は一致しています。

同じ無給勤務は、FEMA、CISA、沿岸警備隊の文民部門にも及びます。これらの仕事は災害対応、重要インフラ防護、サイバー防衛の中核ですが、代替財源が十分でないため「仕事は止められないが、いったん無給」という扱いになりやすいのです。空港の保安要員だけが注目されがちですが、実際には防災とサイバー分野にも負荷が広がっています。

TSA救済は全体解決にならない理由

3月27日、トランプ大統領はTSA職員への支払いを認める緊急措置を出しました。AP配信を載せたFederal News Networkによると、政権は「TSA業務と合理的・論理的な関連を持つ資金」を使うとしており、職員は3月30日にも給与を確認できるとされました。空港混乱の緩和という点では即効性がありますが、これはDHS全体の財源問題を解決するものではありません。

理由は単純で、この措置はTSA向けの特例だからです。CBPやICEのように別財源を持つ組織はもともと比較的守られていましたが、FEMA、CISA、沿岸警備隊文民、事務支援職などには同じ救済が自動的に広がりません。OPMが示す原則に戻れば、年次歳出に依存する業務は閉鎖が終わるまで給与支払いが遅れるのが基本です。今回のTSA特例は、空港の混乱を抑える政治的・運用的な応急措置であり、DHSの賃金不均衡を是正する包括策ではありません。

CBP・ICE有給・TSA一部救済が示す財源優先の論理と残る格差

よくある誤解は、「law enforcementは全員有給、他は全員無給」という単純な見方です。実際には、CBPでも一部はなお無給勤務で、Federal News Networkは約5600人が働きながら支払いを待つと伝えています。逆にTSAは本来無給勤務でしたが、政治判断で一部救済が入りました。職種そのものより、資金の法的な出どころが優先されている点が重要です。

今後の焦点は2つあります。第1に、TSA向け特例が他のミッション領域へ拡張されるかです。第2に、閉鎖が長引くほど、有給と無給の格差が離職や士気低下を通じて現場能力をさらに傷つけることです。とくに沿岸警備隊では、同じ組織内で現役軍人に給料が出て、文民職員に出ない状態が続いています。こうした差は制度上説明できても、運用現場では強い不公平感として残ります。

議会の恒久財源が焦点、財源区分がむき出しにしたDHSの優先順位

DHS閉鎖下で誰に給料が出るのかは、役職名よりも、代替財源の有無と「exempt」「excepted」「furloughed」という法的区分で決まります。現時点では、CBP、ICE、沿岸警備隊の現役軍人などは比較的守られ、TSAは大統領の特例で一部救済されました。一方で、FEMA、CISA、沿岸警備隊の文民部門などは、重要任務を担いながら無給勤務に置かれやすい状況です。

つまり今回の閉鎖は、単なる政争ではなく、DHS内部で「どの任務をどの財源で維持するか」という優先順位をむき出しにしました。空港の混乱が少し落ち着いても、DHS全体の給与問題が解消したわけではありません。次に見るべきは、議会が恒久財源で閉鎖を終わらせるのか、それとも特例の積み上げで延命するのかという点です。

参考資料:

長谷川 悠人

米国政治・外交

米国政治の内幕を、ホワイトハウスから議会まで多角的に分析。政策決定のプロセスと日本への影響を鋭く読み解く。

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