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CA共和党保安官が65万票を押収、知事選控え選挙不正調査に波紋

by 長谷川 悠人
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はじめに

カリフォルニア州リバーサイド郡のチャド・ビアンコ保安官が、2025年の州民投票で使われた65万票以上の投票用紙を押収し、全米的な注目を集めています。ビアンコ氏は約4万5,800票の「不審な差異」があると主張していますが、選挙管理当局はこの主張には根拠がないと反論しています。

事態をさらに複雑にしているのが、ビアンコ氏が共和党のカリフォルニア州知事候補であるという事実です。選挙の公正性を調査する立場にある保安官が、同時に選挙で利益を得る立場の候補者でもあるという利益相反が指摘されています。

押収の経緯と主張

住民団体の訴えから捜査開始

ビアンコ保安官は3月20日の記者会見で、地元の市民団体「リバーサイド選挙公正チーム」からの告発を受けて捜査を開始したと説明しました。告発の対象は、2025年11月に行われた州議会の選挙区再編に関する住民投票「Proposition 50」の開票結果です。

同団体は、手書きの投票用紙受領記録と州に報告された最終票数の間に約4万5,800票の差異があると主張しました。ビアンコ氏は2月に令状を取得し、郡選挙管理事務所から約1,000箱の投票用紙と選挙関連資料を押収しました。

65万票の大規模押収

押収された投票用紙は65万6,000票以上にのぼり、保安官が選挙資料をこの規模で押収した例は、カリフォルニア州の歴史上ほとんどありません。投票用紙は現在、保安官事務所の管理下に置かれており、選挙管理当局のアクセスが制限されている状態です。

選挙管理当局の反論

差異はわずか103票

郡の選挙管理当局は、ビアンコ氏の主張を明確に否定しています。当局によると、市民団体が問題視した「手書きの受領記録」は、投票所の職員が深夜に行う概算記録であり、最終的な得票数と正確に一致することを意図したものではありません。

署名照合、仮投票、条件付き投票、機密保護が必要な投票者の処理などを経た最終的な差異はわずか約103票でした。これは総投票数の約0.016%に相当し、カリフォルニア州務長官が設定する2%の許容範囲を大きく下回っています。

州当局の強い反発

カリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官(民主党)は、ビアンコ氏の行動を「前例のない」ものと強く批判しました。ボンタ長官は書簡の中で、投票用紙の押収は「容認できない」ものであり、「危険な前例を作り、選挙への不信感を助長するだけだ」と述べています。

シャーリー・ウェーバー州務長官も、ビアンコ氏の主張には「信頼できる証拠がない」との見解を示しています。

政治的背景と利益相反

知事選候補としてのビアンコ氏

ビアンコ保安官は、6月の予備選に向けて共和党のカリフォルニア州知事候補として出馬を表明しています。トランプ大統領との親和性が高いことで知られ、全米的な「選挙不正」の言説に沿った行動をとっていると指摘されています。

選挙の公正性に関する調査が注目を集めることは、知事選における保守派有権者からの支持を固めるのに有利に働く可能性があります。この点が、ビアンコ氏の動機に対する疑念を生んでいます。

共和党内からも疑問の声

注目すべきは、共和党内部からも今回の行動に対する疑問が出ている点です。選挙の信頼性を守ることは重要ですが、証拠が不十分な段階で大規模な投票用紙の押収を行うことが、かえって選挙制度への信頼を損ないかねないとの懸念が示されています。

選挙制度への影響

投票用紙管理の問題

保安官事務所が65万票以上の投票用紙を管理下に置いている現状は、選挙資料の管理体制に関する新たな問題を提起しています。通常、投票用紙は選挙管理委員会の厳格な管理下に置かれ、第三者によるアクセスは厳しく制限されます。

法執行機関による押収は令状に基づくものですが、選挙管理のプロセス外で大量の投票用紙が保管されることのリスクについて、選挙法の専門家から懸念が出ています。

全米への波及懸念

この事例が前例となれば、他の州でも同様の動きが広がる可能性があります。保安官や地方の法執行機関が選挙結果に疑義を呈して投票用紙を押収するケースが増えれば、選挙の実施そのものに支障をきたしかねません。

注意点・展望

ビアンコ保安官の主張と選挙管理当局の説明には大きな隔たりがあります。約4万5,800票の「差異」という主張に対し、当局は概算記録と最終集計の性質の違いを指摘し、実際の誤差はわずか103票と説明しています。

今後の焦点は、州司法長官が法的措置に踏み切るかどうかです。ボンタ長官は既に強い懸念を示しており、投票用紙の返還を求める法的手続きが進む可能性があります。また、6月の予備選を控え、この問題が知事選の争点として政治化する展開も予想されます。

まとめ

リバーサイド郡保安官による65万票以上の投票用紙押収は、選挙不正の調査と政治的動機の境界が曖昧な事態を生み出しています。選挙管理当局がデータに基づいて差異の小ささを説明している一方、知事選候補でもある保安官の行動には利益相反の疑念がつきまとっています。

カリフォルニア州の対応と今後の法的展開が、全米の選挙管理のあり方に影響を与える可能性があります。選挙の透明性を確保しつつ、根拠のない不正主張から選挙制度を守るバランスが問われる局面です。

参考資料:

長谷川 悠人

米国政治・外交

米国政治の内幕を、ホワイトハウスから議会まで多角的に分析。政策決定のプロセスと日本への影響を鋭く読み解く。

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