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欧州の反トランプ感情は反米なのか対米観の分断と新距離感の構図

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はじめに

2026年春の欧州では、トランプ政権への反感が急速に強まっています。背景には、対欧州関税、グリーンランドをめぐる威圧的発言、ウクライナ対応への不信、そして2月28日の米国・イスラエルによる対イラン攻撃があります。米欧関係は明らかに冷え込んでいます。

ただし、それがそのまま全面的な「反米」に転化しているかといえば、構図はもっと複雑です。世論調査や人の移動データをみると、欧州では米国政府やトランプ氏への拒否感が強い一方で、米国社会や個々の米国人は別物として扱う傾向が残っています。本稿では、この微妙な距離感を整理します。

強まる欧州の対トランプ不信

2025年から2026年にかけての急速な悪化

欧州の対米感情が悪化していること自体は、複数の調査でかなり明確です。YouGovは2025年3月調査で、米国への否定的評価が英国で53%、ドイツで56%、スウェーデンで63%、デンマークで74%に達したと報告しました。トランプ氏再登板後の数カ月で、西欧主要国の対米イメージが大きく冷え込んだ形です。

2026年2月のYouGov調査では、英国、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペインの6カ国で、米国を欧州への「主要または中程度の脅威」とみる人が34%から61%に達しました。しかも同調査は、対米感情が追跡開始以降で最も悪い水準にあると整理しています。これは単なる好き嫌いではなく、安全保障や価値観を含む不信に近い数字です。

Pew Research Centerの2025年春調査でも、24カ国中19カ国でトランプ氏の世界指導への信頼が過半を割り込み、15カ国で米国への好感度が前年より低下しました。フランス、ドイツ、スペイン、英国など西欧主要国では、バイデン政権期よりもトランプ氏への信頼が低く、回答者の多くが同氏を「傲慢」「危険」とみています。

イラン攻撃が広げた政治的距離

この不信に、2026年2月末の対イラン攻撃が新たな火をつけました。APは、欧州各国首脳が米国・イスラエルの攻撃に慎重に反応し、英国、フランス、ドイツは攻撃を直接支持せず、米イラン核交渉の再開を求めたと報じています。

ここで重要なのは、欧州の不快感が単なる価値観の違いではなく、「また米国が欧州を巻き込むのではないか」という実利的な警戒を伴っていることです。2025年2月のECFR調査でも、欧州人の多くは米国をもはや「同盟国」ではなく「必要なパートナー」と捉えています。言い換えれば、情緒的な信頼は薄れたが、関係を切るわけにもいかないという認識です。

それでも全面的な反米に傾かない理由

政権と社会を切り分ける視線

欧州がトランプ氏に怒っていても、米国人全体を同じように見ているわけではない理由の一つは、米国内の分断が外からも見えているためです。Ipsosの2026年3月調査では、米国の対イラン軍事行動について64%が「政権は目的を明確に説明していない」と答え、支持は29%、不支持は43%でした。欧州から見れば、米国社会そのものもトランプ政権の外交を無条件で支持しているわけではありません。

PewのG7比較もこの見方を補強します。2025年春時点で、米国人は他のG7諸国を比較的好意的に見ている一方、G7各国の人々は米国をより冷ややかに見ていました。たとえば、ドイツに好意的な米国人は65%だったのに対し、米国に好意的なドイツ人は33%にとどまりました。この非対称性は、欧州側の失望が強いことを示す半面、「米国民との相互嫌悪」にまでは至っていないことも示しています。

人の移動が示す拒絶なき距離感

人の流れも、この切り分けを裏づけます。Reutersが伝えたフランス観光省データでは、2025年にフランスを訪れた米国人は500万人超で、前年比17%増でした。トランプ政権が欧州を繰り返し攻撃していたにもかかわらず、フランス側は米国人観光客を受け入れ続け、消費額も9%増えています。欧州が「米国人は歓迎しない」という空気なら、この数字にはなりにくいでしょう。

逆方向の動きもあります。Reutersが報じたところによれば、2025年初めの米国からアイルランドへの旅券申請は月平均4300件近くと、前年より約60%増えました。フランスでも2025年第1四半期の米国人による長期ビザ申請は2383件で、前年同期の1980件を上回りました。欧州が米国人を一律に突き放しているなら、こうした移住・長期滞在需要は伸びにくいはずです。

もちろん、観光や移住の数字だけで「欧州は米国人に寛容だ」と断定することはできません。ただ、政権批判の高まりと、人の往来や個人レベルの受容が同時に存在していることは確認できます。

イラク戦争期との違い

2003年の急落と現在の差

Pewの2003年調査は、イラク戦争直前に欧州の米国イメージが急落したことを示しています。英国で米国への好感度は2002年半ばの75%から48%へ下がり、イタリアでも70%から34%へ半減しました。当時はブッシュ政権への反発が、かなり直接的に「アメリカそのもの」への嫌悪へ広がっていました。

一方、現在の欧州は、米国を厳しく見ながらも、それを一つの塊として処理していません。ECFRやYouGovの調査では、米国は「同盟国」ではなくなりつつあるものの、「必要なパートナー」という現実認識が残っています。NATOへの支持も依然として高く、欧州は米国からの自立を語りながら、完全な断絶は望んでいません。

この差は、欧州が米国の政策変動と国内分断を経験的に理解するようになったことを映しています。だからこそ今回は、「米国への幻滅」と「米国社会との付き合いの継続」が同時に起きています。

注意点・展望

注意したいのは、この切り分けが安定的に続く保証はないことです。対イラン戦争が長期化し、欧州が難民、エネルギー、テロ対策、物価上昇の形で直接コストを負うほど、怒りの矛先は再び「トランプ政権」から「米国全体」へ広がりかねません。とくに、米国が欧州の意向を無視して一方的な軍事・通商行動を重ねれば、必要なパートナーという最低限の見方すら弱まる可能性があります。

一方で、米国社会の側でも政権への異論が可視化され続ければ、欧州は米国人個人とホワイトハウスを分けて考えやすくなります。今後の焦点は、戦争の長期化だけでなく、米国内の選挙、世論、議会がどれだけ外交の方向修正に影響できるかです。

まとめ

現在の欧州は、明らかにトランプ政権に怒っています。関税、安全保障、イラン攻撃のいずれをとっても、対米不信は強まっています。しかし、その不信はまだ全面的な反米にはなりきっていません。

世論調査と人の移動データを合わせてみると、欧州は米国政府を警戒しつつ、米国社会や個々の米国人とは関係を保とうとしていることが分かります。いま進んでいるのは「反米」の再来というより、米国を信頼ではなく条件付きの距離感で扱う、新しい対米現実主義です。

参考資料:

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