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レオン・ブラックとエプスタインの1.7億ドル問題の全容

by 三浦 愛子
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レオン・ブラック1.7億ドル疑惑の全体像

米国プライベートエクイティ業界の巨人、レオン・ブラック氏と故ジェフリー・エプスタインとの金銭関係が、再び大きな注目を集めています。ブラック氏はエプスタインに対して「税務・資産管理のアドバイス料」として約1億7000万ドル(約255億円)を支払ったと説明してきましたが、米上院財政委員会の調査により、その支払いの実態が税務サービスの範囲を大きく超えていた疑いが浮上しています。2026年3月には新たな文書が公開され、「口止め料」的な支払いや女性への監視活動にエプスタインが関与していた可能性が指摘されました。本記事では、この問題の全体像と最新の調査進展を解説します。

1億7000万ドルの支払いの実態

当初の説明と矛盾

レオン・ブラック氏は、Apollo Global Managementの共同創業者であり、かつてはCEO兼会長を務めた人物です。同氏は2012年から2017年にかけてエプスタインに多額の報酬を支払い、その目的を「家族のパートナーシップや関連ファミリーエンティティに関する資産計画、税務、慈善活動のアドバイス」と説明していました。

しかし、上院財政委員会の調査によれば、ブラック氏がエプスタインに支払った総額は1億7000万ドルに達し、これはApollo取締役会が委託した独立調査で確認された1億5800万ドルよりも1200万ドル多い金額でした。さらに注目すべきは、この報酬がブラック氏がすでに雇用していた一流の税務・資産アドバイザーに支払っていた金額の約30倍に相当するという点です。

不透明な資金の流れ

調査では、ブラック氏がエプスタインに支払った1000万ドルが、実在する501(c)(3)の免税慈善団体を通じた偽装的な形で処理されていたことも判明しています。これは連邦税法上の重大な問題を提起するものです。エプスタインが保有していた文書では、ブラック氏から女性たちへ支払われた数百万ドルが「贈与」として記録されており、贈与税・相続税に関する連邦税法の遵守が疑われています。

「口止め料」と女性監視の疑惑

上院財政委員会の新たな発見

2026年3月23日、ロン・ワイデン上院議員(上院財政委員会)は、エプスタイン関連文書の新たな分析結果を公表しました。この調査は、ブラック氏のエプスタインへの支払いが単なる税務サービスにとどまらず、「口止め料」的な性質を持つ支払いや、女性に対する監視活動を含んでいた可能性を示唆しています。

具体的には、エプスタインと大手法律事務所の責任者が協力して、ブラック氏に代わって女性たちを監視していたとされています。さらに衝撃的なのは、エプスタインがブラック氏の給与リストに載っていた女性たちの所在情報をロシア政府に提供していたという疑惑です。この行為の目的は現時点では不明ですが、国際的な安全保障上の懸念も提起しています。

ブラック氏に対する個人的な告発

少なくとも4人の女性がブラック氏による性的暴行を告発しており、そのうち2人は2002年にエプスタインのマンハッタンの邸宅でブラック氏に暴行されたと主張しています。ブラック氏はすべての暴行の申し立てを否定しており、刑事訴追を受けたことはありません。

Apolloへの影響と金融業界の対応

ブラック氏の辞任とApolloの立場

2021年、Apollo Global Managementが委託した法律事務所Dechert LLPの調査報告書が公表され、ブラック氏のエプスタインへの1億5800万ドルの支払いが確認されました。これを受けてブラック氏はCEOおよび会長の職を退きました。Apolloは、ブラック氏以外の共同創業者や社員はエプスタインとビジネス上・個人的な関係を持っていなかったと表明しています。

2026年2月にはApolloがクライアントおよびパートナー向けに書簡を送付し、エプスタイン関連の問題に対する同社の立場を改めて説明しました。しかし、株主がブラック氏と現CEO のマーク・ローワン氏をエプスタインとの関係をめぐって訴訟を起こすなど、影響は長期化しています。

バンク・オブ・アメリカの和解

2026年3月、バンク・オブ・アメリカはエプスタイン被害者との訴訟で和解に達しました。被害者側の弁護団は、上院財政委員会の調査結果を活用し、バンク・オブ・アメリカがブラック氏からエプスタインへの1億7000万ドル以上の送金を故意に見過ごしていたことを立証しました。また、裁判所はブラック氏にこの訴訟における証言録取(デポジション)を命じています。

5月13日議会聴取と金融機関訴訟の拡大

この問題は今後さらに展開が予想されます。米下院監視・政府改革委員会は、2026年5月13日にブラック氏のインタビューを要請しており、議会レベルでの追及が続きます。また、バンク・オブ・アメリカの和解を受けて、他の金融機関に対しても同様の訴訟が拡大する可能性があります。

重要な点として、ブラック氏はすべての不正行為の申し立てを否定しており、刑事訴追も受けていません。しかし、上院の調査で新たに公開された文書は、エプスタインへの巨額の支払いが「税務アドバイス」という説明では到底正当化できない内容を含んでいることを示唆しています。プライベートエクイティ業界全体にとっても、ガバナンスと透明性のあり方が改めて問われる事態となっています。

口止め料・女性監視疑惑と業界改革への波及

レオン・ブラック氏とエプスタインの関係は、単なる金融サービスの枠を超えた深刻な問題をはらんでいます。1億7000万ドルという異常な支払い、口止め料疑惑、女性監視への関与など、米上院の調査が明らかにした事実は、ウォール街の権力構造とその暗部を浮き彫りにしています。議会の調査と司法手続きが進む中、今後数カ月でさらなる真相が明らかになる可能性があります。この問題の行方は、金融業界のガバナンス改革や被害者救済のあり方にも大きな影響を与えるでしょう。

参考資料:

三
三浦 愛子

米国経済・金融市場

米国経済の構造変化を、金融市場・財政政策・産業動向の三軸で分析。ウォール街と実体経済のギャップを見抜く。

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