米ワクチン諮問委副委員長が辞任、混迷深まるACIP問題
マローン氏辞任で深まるACIP混迷
2026年3月24日、米疾病対策センター(CDC)のワクチン接種諮問委員会(ACIP)の副委員長を務めていたロバート・マローン氏が辞任しました。マローン氏は、ロバート・F・ケネディJr.保健福祉長官が昨年行った委員会の全面刷新で任命された人物です。
辞任の直接の引き金は、保健福祉省(HHS)報道官との意見対立とされていますが、背景にはACIPをめぐる一連の混乱があります。連邦判事が委員会の再編と小児ワクチンスケジュールの変更を差し止める判決を下したことで、米国のワクチン政策は深刻な混迷状態に陥っています。
ケネディ長官によるACIP刷新の経緯
前例のない全委員解任
2025年6月、ケネディ保健福祉長官は、ACIPの全17名の委員を一斉に解任しました。ACIPはCDCに対してワクチン接種の推奨を行う専門家委員会であり、長年にわたって米国のワクチン政策の根幹を担ってきた組織です。
ケネディ長官はワクチンに批判的な立場で知られる人物であり、保健福祉長官就任前から反ワクチン活動の第一人者として知られていました。全委員を解任した後、ワクチンに懐疑的な見解を持つメンバーを含む独自の委員を任命しました。マローン氏は副委員長として任命されたメンバーの一人です。
小児ワクチンスケジュールの大幅縮小
2026年1月、ケネディ長官とCDCは小児ワクチンスケジュールを大幅に変更し、推奨されるワクチンの対象疾患を18から11に削減しました。具体的には、すべての乳児に対するA型肝炎、B型肝炎、RSウイルス、デング熱、および2種類の細菌性髄膜炎に対するワクチン接種の推奨が撤廃されました。
さらに、新生児全員へのB型肝炎ワクチン接種推奨を取りやめる投票も行われ、インフルエンザやロタウイルスのワクチンに関する全児童への推奨も終了しました。
連邦裁判所の差し止め命令
判事の判断
2026年3月16日、連邦地方裁判所のブライアン・E・マーフィー判事は、米国小児科学会の申し立てを認め、ワクチンスケジュールの変更とACIPの再編に対する仮差し止め命令を出しました。
判事は、ケネディ長官によるACIPの再編が連邦諮問委員会法に違反している可能性が高いと判断しました。また、CDCがACIPを経由せずにワクチンスケジュールを変更したことについて、「手続き上の不備」であり「委員会が体現する技術的知識と専門性の放棄」であると指摘しています。
専門性の欠如を指摘
判事は新たに任命された委員の専門性について厳しい評価を下しました。現在のACIP委員15名のうち、最も好意的に解釈しても、ワクチンに関する実質的な経験を持つのはわずか6名に過ぎないとし、委員会の機能遂行に必要な専門性に「明白な欠落」があると指摘しました。
この判決により、ケネディ長官が任命した委員の就任と、再編後の委員会が行ったすべての決定が一時的に停止されました。
マローン氏辞任の詳細
辞任の直接的な理由
マローン氏は3月24日のテキストメッセージで、HHS報道官のアンドリュー・ニクソン氏との対立を辞任理由に挙げました。「アンドリューがマスコミに対して私を非難した後、CDCとACIPとは関わりたくない」と述べています。
報道官との対立は、裁判所の差し止め命令を受けた控訴方針をめぐるものでした。マローン氏が控訴について発言した内容を、報道官が公に否定したことが決定的な引き金となったとされています。
より広範な不満
マローン氏は辞任理由をより広く説明し、「数百時間に及ぶ無報酬の労働、あらゆる方面からの激しい憎悪、敵意的な報道、内部の意見対立、武器化されたリーク、妨害行為」を挙げました。「ドラマは好まない。もっとましなことがある」とも述べています。
ACIP機能不全が招く接種率低下リスク
ACIPの混乱が長期化すれば、米国の公衆衛生に深刻な影響を及ぼす可能性があります。ACIPの推奨は、保険適用の基準や学校入学時のワクチン接種要件に直結しており、委員会が機能不全に陥ることは、子どもたちの予防接種率低下につながるリスクがあります。
裁判所の差し止め命令に対し、政権側が控訴するかどうかは現時点では不透明です。仮に控訴が行われたとしても、ワクチンスケジュールの変更が最終的に認められるかは予断を許しません。
また、マローン氏の辞任により、ケネディ長官が任命した委員会の求心力がさらに低下する可能性があります。ACIPが「解散」される可能性にも言及されており、米国のワクチン政策の行方は極めて不透明な状況です。
司法判断で揺らぐ米ワクチン政策の行方
マローン氏のACIP副委員長辞任は、ケネディ保健福祉長官によるワクチン政策の大幅な見直しが多方面から抵抗を受けている現状を象徴しています。連邦裁判所はACIPの再編と小児ワクチンスケジュールの変更を差し止め、委員の専門性の欠如を厳しく指摘しました。
米国のワクチン政策は司法・行政・公衆衛生の各レベルで混迷を深めており、最終的な方向性が定まるにはまだ時間がかかる見通しです。世界的にも感染症対策の基盤であるワクチン政策の動向として、今後の展開に注目が集まります。
参考資料:
- CDC vaccine adviser Malone steps down to avoid ‘drama’
- Federal vaccine adviser Robert Malone departs ACIP
- US judge blocks Kennedy’s efforts to overhaul US vaccine policy
- Federal judge blocks RFK Jr.’s changes to childhood vaccine schedule
- Influential vaccine advisory panel ACIP may be ‘disbanded’ after lawsuit
- RFK Jr.’s vaccine panel member quits in anger after judge says he’s not qualified
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