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米国の留学生激減、大学経営を直撃する入学者17%減の衝撃

by 村上 詩織
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米新規留学生17%減と大学経営危機

米国の大学が、留学生の急激な減少に揺れています。国際教育研究所(IIE)の調査によると、2025年秋学期の新規留学生数は前年比17%減となり、パンデミックを除けば過去11年間で最大の減少を記録しました。トランプ政権が進めるビザ規制の強化や渡航制限の拡大が主な原因とされ、その経済的損失は11億ドル(約1,650億円)に上ると推計されています。影響はハーバードやMITといったエリート校だけでなく、むしろ留学生の授業料収入に依存する地方の中小規模大学に深刻な打撃を与えています。ノーステキサス大学では留学生減少を主因とする4,500万ドルの財政赤字に直面し、70以上の学術プログラムの廃止を余儀なくされるなど、米国の高等教育システム全体が構造的な危機に陥りつつあります。

トランプ政権のビザ規制強化

相次ぐ制限措置

トランプ政権は就任以来、留学生に影響する一連の規制強化を実施してきました。Inside Higher Edの時系列分析によると、主要な措置は以下の通りです。

2025年春には、国務省がビザ面接を数週間にわたり一時停止し、留学予定者のソーシャルメディアに対する審査を強化しました。同年8月には、国土安全保障省(DHS)が「外国人学生ビザの悪用を終わらせる」ための新規則案を発表しました。この規則では、F-1ビザ(学生ビザ)の有効期限をプログラム期間に応じて最長4年に制限し、大学院生が他の教育機関に転学したり専攻を変更したりすることを禁止する内容が含まれています。

さらに2025年12月には、渡航禁止令が39か国とパレスチナ自治区にまで拡大され、これらの地域からのF-1、J-1、M-1ビザ申請者が全面的または部分的に入国を制限される事態となりました。

ビザ発給数の激減

規制強化の影響は数字に如実に表れています。Inside Higher Edが報じた国務省データの分析によると、2025年夏(6月〜8月)に発給された学生ビザは186,160件で、前年同期から10万件以上の減少を記録しました。これは35.6%の減少に相当し、留学生のパイプラインが急速に細りつつあることを示しています。EdSourceの報道では、高等教育機関の96%がビザ申請に関する懸念を入学者減少の障壁として挙げ、68%が渡航制限を直接の原因として指摘しています。

大学経営への深刻な打撃

地方大学と中小規模校への不均衡な影響

留学生減少の影響は、一般に想像されるエリート校よりも、地方の中小規模大学に集中しています。Inside Higher Edの報道によると、留学生の大多数を受け入れている大規模な選抜校では入学者数の減少はまだ限定的ですが、小規模な地域密着型の大学がより深刻な打撃を受けています。

具体的な事例を見ると、シアトル北部のエドモンズ・カレッジでは新規留学生が25%減少し、同じくシアトル近郊のベルビュー・カレッジでは36%減となりました。ニューヨーク州西部の小規模カトリック大学であるナイアガラ大学では、留学生が45%も減少し、それに伴うスタッフの削減を余儀なくされています。

ノーステキサス大学の危機

最も深刻な事例の一つが、テキサス州のノーステキサス大学(UNT)です。テキサス・トリビューンの報道によると、UNTは留学生の急減を主因とする4,500万ドルの予算不足に直面しています。特に留学大学院生の減少が予想以上に急激だったことに加え、州の教育運営資金が3,200万ドル削減されたことが重なりました。

ハリソン・ケラー学長は、70以上の学術プログラム、副専攻、修了証の廃止・統合を発表するとともに、教員の教育負担の引き上げや希望退職プログラムの実施を検討していることを明らかにしました。さらに予算赤字は当初見込みより1,500万ドル悪化しており、これは一時的なものではなく「構造的」な問題だとケラー学長は認めています。

経済的影響と競争力の低下

430億ドル産業の縮小

留学生は米国経済にとって巨大な貢献者です。NAFSAの分析によると、2024-2025年度に米国の大学に在籍する留学生は経済全体で429億ドル(約6.4兆円)を貢献し、35万5,000以上の雇用を支えました。前年度の438億ドル、37万8,000の雇用からはすでに減少傾向にあります。

CNBCの報道では、2025年秋学期の留学生減少だけで11億ドルの経済的損失が見込まれています。留学生1人あたり平均約29,000ドルを授業料から日常生活費まで支出するとされ、特に州外からの全額授業料を支払う留学生1人を失うと、それを補うために2人以上の州内学生を新たに確保する必要があるという試算もあります。

地域経済への波及

留学生の経済的貢献は大学の構内にとどまりません。The Conversationの報道によると、ミネソタ州マンカト市(人口約45,000人)では、ミネソタ州立大学の留学生が4,590万ドルの経済効果をもたらし、約190の雇用を支えています。アリゾナ州立大学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、カリフォルニア大学バークレー校の上位3公立大学だけでも、留学生は約17億ドルを貢献し、16,800以上の雇用を支えています。

コミュニティ・カレッジも留学生から約20億ドルの収入を得ており、特にテキサス、カリフォルニア、フロリダの地域社会で8,472の雇用を支えています。これらの数字が示すように、留学生の減少は大学だけでなく、周辺地域の経済にも連鎖的な影響を与えます。

2026年の追加減少リスクと留学先分散

2026年が米国の留学生政策にとって重要な分岐点となる可能性があります。Higher Ed Diveの報道によると、72%の大学が入学許可を得た留学生に対して2026年春学期への入学延期を提供しましたが、アナリストは2026年を「本当のリトマス試験」と位置づけています。留学候補者が1年間をかけて米国の大学に出願するかどうかを判断する時間を持った上での結果が出るためです。現行の規制がすべて維持された場合、2026年にはさらに10〜15%の減少が予測されています。

一方で、米国を敬遠した留学生がヨーロッパやアジアの大学に流れる動きも顕在化しています。教育関連企業の調査では、将来の留学候補者の米国への関心が低下し、代替先としてイギリス、カナダ、オーストラリア、さらにはシンガポールや日本への関心が高まっていると報告されています。

米国の高等教育が長年にわたって築いてきた「世界中から最も優秀な人材を引きつける」という競争力が、政策変更によって損なわれるリスクは深刻です。留学生は卒業後に米国のテック産業や研究機関で活躍するケースも多く、人材パイプラインの縮小は長期的なイノベーション力にも影響しかねません。

ビザ規制が招く430億ドル産業の構造危機

トランプ政権のビザ規制強化により、米国の新規留学生数は2025年秋学期に17%減少し、ビザ発給数は前年夏から35.6%も激減しました。その影響はエリート校よりもむしろ地方の中小規模大学に集中しており、ノーステキサス大学では4,500万ドルの財政赤字から70以上のプログラム廃止に追い込まれています。留学生が年間430億ドルを貢献する米国の高等教育にとって、この減少は単なる入学者数の問題にとどまらず、大学経営、地域経済、そして長期的な国際競争力に関わる構造的な課題です。2026年の動向が、米国の高等教育の国際的地位を左右する重要な試金石となるでしょう。

参考資料:

村上 詩織

移民・難民・教育格差

移民・難民・教育格差など、社会の周縁に置かれた人々の声を丁寧に取材。制度と現実のギャップを浮き彫りにする。

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