子ども向け「トランプ口座」にBNYとRobinhoodが参画
BNY・Robinhood参画のトランプ口座
2026年4月6日、米財務省は子ども向けの税制優遇投資口座「トランプ口座(Trump Accounts)」の運営に、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNY)とオンライン証券のRobinhoodを指名したと発表しました。この制度は2025年7月に成立した「One Big Beautiful Bill Act」に基づくもので、2025年から2028年に生まれた子どもに政府から1,000ドル(約15万円)の初期資金が提供されます。CNBCの報道によれば、3月31日時点で400万人以上の子どもが登録済みで、7月4日の独立記念日から入金が開始される予定です。本記事では、この新制度の仕組み、運営体制、そして浮上している課題を解説します。
トランプ口座の仕組みと特徴
制度の概要
トランプ口座は、「One Big Beautiful Bill Act(公法119-21号)」によって創設された子ども向けの税制繰延投資口座です。IRSの公式ガイダンスによれば、18歳未満の子どもを対象とし、投資して18歳まで使用しなければ一定の税制優遇が受けられます。
主な制度内容は以下の通りです。まず、2025年1月1日から2028年12月31日の間に生まれた米国市民の子どもには、政府から1回限りの1,000ドルのパイロットプログラム拠出金が支給されます。家族からの年間拠出上限は5,000ドルで、2027年以降はインフレ調整が行われます。雇用主も従業員の子どものために年間最大2,500ドルを税引き前で拠出できます。
投資対象は、S&P 500などの米国の幅広い株価指数に連動する投資信託またはETFに限定されており、信託報酬は0.1%以下でなければなりません。個別株式、債券、暗号資産、オルタナティブ投資は認められていません。59歳半より前の引き出しには10%のペナルティが課されますが、教育費、住宅購入、養子縁組、災害救援などの例外があります。
口座開設と登録状況
保護者はIRSフォーム4547またはtrumpaccounts.govのオンラインポータルを通じて口座を開設できます。Fortuneの報道によれば、3月31日時点で400万人以上の子どもがトランプ口座に登録されており、そのうち100万人以上が財務省の1,000ドルパイロットプログラムの対象となっています。
BNYとRobinhoodの役割
財務省によるパートナー選定
財務省は公式プレスリリースで、BNYをトランプ口座プログラムを支援する財務代理人として指名したと発表しました。BNYは初期口座の管理を担当し、Robinhoodは証券会社および初期受託者として機能します。
CNBCの報道によれば、両社は共同でトランプ口座専用アプリを開発します。このアプリは財務省専用に設計されたカスタムのホワイトラベル製品で、Robinhoodのナショナルデザインスタジオがユーザーインターフェースとユーザーエクスペリエンスの設計を担当します。
ウォール街の競争
Deseret Newsの報道によれば、この口座プログラムの運営を巡り金融業界で激しい競争が繰り広げられました。子どもが乳幼児の段階で口座を開設すれば、生涯にわたる顧客を獲得できる可能性があるため、大手金融機関にとって戦略的に重要な案件でした。BNYとRobinhoodの組み合わせは、伝統的な金融機関の信頼性とフィンテック企業のテクノロジー力を融合させた選択といえます。
Vanguardの解説によれば、今後追加のブローカーや受託者も参入することが見込まれており、Charles Schwabなどの大手もトランプ口座に関する投資家向けガイダンスをすでに公開しています。
62億5,000万ドル支援と格差懸念
トランプ口座には、著名な投資家や実業家から大規模な支援が寄せられています。Fortuneの報道によれば、Dell Technologies創業者のマイケル・デル氏は62億5,000万ドルを拠出し、経済的に恵まれない地域の約2,500万人の11歳以下の子どもに1人あたり約250ドルを提供する計画です。ヘッジファンド大手Bridgewater Associates創業者のレイ・ダリオ氏と妻のバーバラ氏は、コネチカット州の約30万人の子どもの口座に資金を提供すると表明しました。
しかし、この制度に対しては批判も少なくありません。経済政策研究所(EPI)は、富裕層の子どもがより大きな恩恵を受け、低所得家庭の子どもには十分な効果が及ばないと指摘しています。政府からの1,000ドルの初期資金はあるものの、追加拠出は家族の経済状況に左右されるため、年間5,000ドルの拠出枠を活用できる裕福な家庭とそうでない家庭の間で格差が拡大する恐れがあります。
Brookings研究所の分析では、「One Big Beautiful Bill Act」全体としては、低所得の勤労世帯に対する給付削減も含まれているため、子どものいる家庭の中で恩恵を受ける世帯と不利益を被る世帯がほぼ同数になる可能性が指摘されています。さらに、Aspen研究所の金融セキュリティプログラムは、英国で実施された類似の制度が「失敗と見なされた」先例があることを警告しています。
7月4日開始へ残る富裕層偏重の課題
トランプ口座は、子どもの将来の資産形成を目的とした野心的な制度であり、BNYとRobinhoodという金融業界の大手がその運営を担うことになりました。7月4日の開始に向け、すでに400万人以上の子どもが登録し、100万人以上が政府の1,000ドル拠出の対象となっています。一方で、制度設計上、富裕層に恩恵が偏りやすい構造や、低所得家庭への効果の限定性といった課題も指摘されています。この制度が真に「すべての子ども」の経済的未来を支えるものになるか、今後の運用と制度改善が注目されます。
参考資料:
- Robinhood, BNY to build Trump accounts app - CNBC
- Treasury Department Designates BNY as Financial Agent to Support New Trump Accounts Program - U.S. Department of the Treasury
- The race on Wall Street begins to manage newly created Trump Accounts - Deseret News
- Trump Accounts: Which American children are eligible - Fortune
- How children are treated in the One Big Beautiful Bill Act - Brookings
- Billionaire-funded Trump Accounts won’t end child poverty - Economic Policy Institute
- What to know about the new Trump accounts for kids - Vanguard
- One Big Beautiful Bill provisions - IRS
米国経済・金融市場
米国経済の構造変化を、金融市場・財政政策・産業動向の三軸で分析。ウォール街と実体経済のギャップを見抜く。
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