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イスラエルのイラン国内反乱計画、3週間経っても実現せず

by 安藤 誠
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開戦3週間でも不発のモサド反乱計画

2026年2月28日に始まった米国とイスラエルによるイラン攻撃は、3週間以上が経過しました。この軍事作戦の重要な柱の一つとして、イスラエルのモサド(対外情報機関)が計画したイラン国内での反乱誘発作戦がありました。しかし、開戦から3週間が経った現在、イラン国内での大規模な蜂起は実現していません。

モサドのダヴィッド・バルネア長官は、軍事攻撃と連動してイラン国内の反体制派を結集させ、神権政治体制を内部から揺るがすことができると主張していました。しかし、米国とイスラエルの情報機関による評価では、イラン指導部は弱体化しているものの、依然として国内の支配権を維持しているとされています。

モサドの反乱誘発計画の詳細

バルネア長官の提案

モサドのバルネア長官は、ネタニヤフ首相に対し、紛争勃発から数日以内にイスラエルの情報機関がイランの反体制派を活性化させ、暴動やより広範な反乱を引き起こすことができるという計画を提示しました。

バルネア長官はこの計画を1月中旬のワシントン訪問時にトランプ政権の幹部にも説明し、ネタニヤフ首相は最終的にこの計画を採用しました。イスラエル軍の推定約8,000回に及ぶ空爆のうち約40%が、今後の民衆蜂起を鎮圧するために使用されうるイランの治安部隊や施設に対して行われたのは、この計画に基づくものです。

直接的な呼びかけ

ネタニヤフ首相は作戦開始後、ペルシャ語でイラン国民に直接呼びかけ、「街に出よ、数百万人で出てきて、仕事を完遂し、恐怖の体制を打倒せよ」と訴えました。これは、2022〜2023年の「マフサ・アミニ」抗議運動のような大規模な民衆蜂起の再現を期待したものでした。

なぜ反乱は実現しなかったのか

空爆下での蜂起の困難さ

多くの米国当局者やイスラエル軍情報部(AMAN)の分析官は、当初からこの計画に懐疑的でした。米軍の指導部はトランプ大統領に対し、イランが積極的な空爆を受けている状況下で大規模な抗議活動が起きる可能性は低いと助言していました。

実際、外国からの攻撃は国民をまとめる「旗の下の結集」効果を生むことが多く、空爆が続く中で市民が政府に反旗を翻すことは心理的に極めて困難です。情報機関の評価でも、大規模蜂起の可能性は低いとされていました。

イラン治安機構の堅固さ

米国とイスラエルの情報機関は、イランの体制が「崩壊していない」と評価しています。2月28日の攻撃で最高指導者のハメネイ師が殺害されるという衝撃的な展開があったにもかかわらず、イランの治安機構は機能を維持しています。

イランの革命防衛隊(IRGC)は国内治安の維持を主要任務の一つとしており、過去の抗議運動でも大規模な鎮圧を行ってきた実績があります。2026年1月には、革命以来最大規模の抗議活動に対し、治安部隊が数千人の抗議者を殺害するという強硬な対応を取っています。

米国とイスラエルの戦略的対立

異なる戦争目標

この反乱計画の失敗は、米国とイスラエルの間の戦略的な溝を浮き彫りにしています。イスラエルにとって「勝利」とは明確に体制転換を意味し、最後のパーレビ朝国王の息子であるレザー・パフラヴィー氏のような親欧米派による新政権の樹立を念頭に置いています。

一方、トランプ政権の立場はより流動的です。米政権高官は「イスラエルは焦土作戦的な体制転換を追求しているが、それは我々の目標ではない」と述べています。トランプ大統領自身も体制転換の要求から後退しつつあるとの分析があります。

クルド人勢力をめぐる意見の相違

計画にはイラク北部を拠点とするイランのクルド人民兵組織への支援も含まれていました。CIAとモサドの共同作戦として検討されていましたが、米国当局者はクルド人勢力への依存に消極的な姿勢を示し、イスラエル側との間で摩擦が生じています。

ホルムズ封鎖と12カ国波及の長期化リスク

開戦から3週間以上が経過し、ホルムズ海峡の封鎖や地域全体への紛争拡大など、当初想定されていなかった事態も発生しています。イランは500発以上の弾道ミサイルと約2,000機のドローンを発射し、紛争は少なくとも12カ国に波及しています。

イスラエル当局者は反乱計画をまだ諦めていないとしていますが、軍事的圧力だけでイランの体制を内部から崩壊させることの困難さは、ますます明白になっています。歴史的にも、外部からの軍事介入だけで体制転換を実現した例は少なく、長期化の可能性が高まっています。

今後の焦点は、米国がどこまでイスラエルの体制転換目標に付き合うのか、そして外交的な解決の道筋が開けるかどうかにあります。

軍事力の限界とイラン体制維持の力学

モサドが計画したイラン国内での反乱誘発作戦は、開戦から3週間が経過しても実現していません。空爆下での大規模蜂起の困難さ、イラン治安機構の堅固さ、そして米国とイスラエルの戦略的な溝という複合的な要因が、この計画の頓挫をもたらしています。

この状況は、軍事力だけで政治的な目標を達成することの限界を改めて示しています。イラン紛争の行方は、軍事作戦の成果だけでなく、米国とイスラエルの戦略的調整、そしてイラン国内の政治力学に大きく左右されることになるでしょう。

参考資料:

安
安藤 誠

南アジア・中東情勢

南アジア・中東を中心に、宗教・民族・歴史の深層から国際情勢を分析。長年の現地経験に基づく多層的な視座が持ち味。

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