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チアリーディングの帝王ジェフ・ウェブ氏死去

by 黒田 奈々
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ジェフ・ウェブ氏死去とVarsity創設の功績

米国の競技チアリーディング業界を築き上げた実業家、ジェフ・ウェブ氏が2026年3月19日に76歳で亡くなりました。ウェブ氏はピックルボール中の転倒事故で重度の頭部外傷を負い、約2週間の入院後、家族の判断で生命維持装置が外されました。

ウェブ氏は1974年にユニバーサル・チアリーダーズ・アソシエーション(UCA)とVarsity Spiritを創設し、サイドラインの応援活動に過ぎなかったチアリーディングを、数十億ドル規模の競技産業へと変貌させた人物です。その影響力はスポーツの枠を超え、政治やメディアにまで及びました。本記事では、ウェブ氏の功績と業界への影響を振り返ります。

チアリーディング産業の誕生と拡大

大学時代の原体験から起業へ

ジェフ・ウェブ氏は1950年1月19日に生まれ、オクラホマ大学在学中にエールリーダー(応援団長)を務めました。大学時代にはナショナル・チアリーダーズ・アソシエーション(NCA)で働いた経験もあり、チアリーディングの可能性にいち早く気づいていた人物です。

1974年、ウェブ氏はUCAとVarsity Spiritをテネシー州メンフィスで設立しました。当時のチアリーディングは試合の観客を盛り上げるための応援活動という位置づけでしたが、ウェブ氏はそこにアスリート性とエンターテインメント性を融合させる新しいビジョンを持っていました。

数十億ドル産業への成長

ウェブ氏の最大の功績は、チアリーディングを競技スポーツとして確立し、巨大産業に育て上げたことです。ESPNとのパートナーシップにより全国放送を実現し、より高度なアクロバットや運動能力を重視するスタイルを推進しました。

この戦略は大きな成功を収めます。1980年代から2000年代にかけてチアリーディングの人気は爆発的に拡大し、Varsity Brandsは業界のあらゆる側面を支配する存在となりました。トレーニングキャンプ、ユニフォーム、大会運営、メディア配信、選手認定に至るまで、垂直統合型のビジネスモデルを構築したのです。

その結果、企業価値は急速に上昇しました。2014年にCharlesbank Capital Partnersが約15億ドルで過半数株式を取得し、2018年にはBain Capitalが約25億ドルで買収。2024年にはKKRが約47.5億ドルで過半数株式を取得するに至っています。

独占への批判と法的紛争

反トラスト訴訟の数々

Varsity Brandsの圧倒的な市場支配は、同時に激しい批判も招きました。2020年には2件の集団訴訟が提起され、Varsity Spiritが独占的契約、略奪的価格設定、米国オールスター連盟(USASF)を通じた影響力の行使によって市場を支配していると訴えられました。

訴状によると、Varsity Spiritはチアリーディングおよびダンスイベントの約90%、ユニフォーム販売の約80%を掌握していたとされています。これらの訴訟は最終的に和解となり、「間接消費者」のクラスに8,250万ドル、オールスターチアジムのグループに4,350万ドル、合計1億2,600万ドル以上が支払われました。

さらに2023年にはチア大会プロデューサーのOpen Cheerがテキサス連邦裁判所で訴訟を提起しており、この裁判は現在も係争中です。

業界への功罪

ウェブ氏が構築した垂直統合モデルは、チアリーディングの急速な発展を可能にした一方で、新規参入の障壁を高め、競争を阻害したという両面の評価があります。業界の標準化と品質向上に貢献した反面、価格の上昇や選択肢の制限を生んだという指摘は重要です。

政治・メディアへの影響

保守派メディアと政治活動

ウェブ氏の活動はスポーツビジネスにとどまりませんでした。保守系ニュースサイト「Human Events」の共同発行人兼シニアニュースエディターを務め、2022年には別の保守系サイト「The Post Millennial」を買収しています。これらのメディアは2025年にトランプ支持者のジョン・ソロン氏が運営するJust the Newsに売却されました。

また、保守派の政治活動家としても知られ、Turning Point USAの創設者チャーリー・カーク氏のメンターとして影響を与えました。Turning Point USAはウェブ氏の死去に際し、「世代を超えた若いリーダーの育成に貢献したビジョナリー」と追悼しています。

KKR傘下Varsity Brandsと業界改革の行方

チアリーディング業界の行方

ウェブ氏の死去により、チアリーディング業界は創設者なき新たな時代を迎えます。Varsity Brandsは現在KKRの傘下にあり、プロチアリーディングリーグの設立など新たな展開を模索しています。

一方で、反トラスト訴訟や市場独占への批判は続いており、業界の構造改革も課題となっています。ウェブ氏が築いた帝国が今後どのように変化していくのか、注目が集まります。

47.5億ドル産業化と独占問題の代償

ジェフ・ウェブ氏は、チアリーディングを応援活動から47.5億ドル規模の競技産業へと変革した人物です。UCAとVarsity Spiritの創設を通じて業界の標準を確立し、ESPNとの連携で全国的な認知度を獲得しました。

その一方で、市場の独占的支配は1億2,600万ドル以上の反トラスト和解金という形で代償を伴いました。76歳での突然の死去は、業界の転換点となる可能性があります。チアリーディング産業が健全な競争環境の中でさらに発展できるかが、今後の焦点です。

参考資料:

黒田 奈々

カルチャー・エンタメ

エンタメ・アート・スポーツを横断的にカバー。ポップカルチャーの潮流とビジネスの交差点から、文化の「いま」を切り取る。

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