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イラン住宅地で米国製対戦車地雷が発見された背景と影響

by 安藤 誠
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カファリ村の米国製地雷散布疑惑

2026年3月下旬、イラン南部シラーズ近郊のカファリ村で、米国製の対戦車地雷が住宅地周辺に散布されている様子が確認されました。調査報道機関Bellingcatや各国メディアの検証により、これらはクラスター弾から散布される「ゲーター散布地雷システム」であることが判明しています。

米国とイスラエルによるイラン攻撃が2026年2月28日に開始されて以来、両国はイランのミサイル発射能力の無力化を主要な作戦目標としてきました。今回の地雷散布は、イランの地下ミサイル基地(いわゆる「ミサイル・シティ」)への車両アクセスを遮断するための戦術とみられています。しかし、民間人の居住地域に地雷が散布されたことで、人道上の深刻な懸念が浮上しています。

本記事では、発見された地雷の正体、その軍事的な狙い、そして民間人への影響と国際法上の問題について解説します。

発見された地雷の正体と散布の経緯

BLU-91/B対戦車地雷とゲーター・システム

カファリ村で発見された装置は、米国製のBLU-91/B散布型対戦車地雷です。この地雷は、CBU-78/BまたはCBU-89/B空中投下型クラスター弾(ゲーター散布地雷システム)から散布されます。CBU-89/Bの場合、1発あたり72個の対戦車地雷(BLU-91/B)と22個の対人地雷(BLU-92/B)が内蔵されています。

BLU-91/Bは平たい円筒形で、マイクロエレクトロニクスにより装甲車両を識別し、標的が最も脆弱な位置に到達した時点で起爆します。爆発によって形成される「自己鍛造弾」(EFP)は、装甲板を貫通する能力を持っています。

散布地点とミサイル基地との関係

Bellingcatの分析によると、発見された地雷の一部はカファリ村にジオロケーション(位置特定)されており、少なくとも3個の地雷がシラーズ南部ミサイル基地の入口から約2キロメートルの地点で確認されました。この基地はイランの「ミサイル・シティ」と呼ばれる地下ミサイル施設の一つとされています。

イラン国営メディアは、これらの装置が「缶詰のように見える」と報じ、住民が危険物と気づかずに接触するリスクを指摘しました。

軍事的意図とミサイル・シティ封鎖戦略

イランの地下ミサイル・ネットワーク

イランは山岳地帯の地下に大規模なミサイル施設ネットワークを構築しています。「ミサイル・シティ」と呼ばれるこれらの施設は、道路移動式の輸送起立発射機(TEL)が通行できるほど幅広いトンネルで構成されています。トンネル内での位置変更により衛星監視を欺くことが可能で、米国とイスラエルにとって最も対処が困難な標的の一つです。

米軍はB-2爆撃機による地中貫通爆弾(バンカーバスター)での攻撃を行ってきましたが、地下深くに建設された施設を完全に破壊することは容易ではありません。開戦以来、イスラエル空軍だけでもミサイル発射装置を300基以上破壊したとされる一方、イランは依然として200基以上の移動式発射装置を保有しているとみられています。

アクセス遮断という新たな戦術

散布地雷の使用は、こうした地下施設への直接攻撃を補完する戦術として位置づけられます。専門家の分析によると、対戦車地雷をミサイル基地の出入口付近に散布することで、TELの出撃を阻止し、損傷した施設へのアクセス復旧作業を妨害する狙いがあります。

爆撃後48時間以内に建設機械が現れ、封鎖された入口の掘削とトンネルへのアクセス復旧が行われている衛星画像が確認されており、こうした復旧活動を地雷によって妨害する意図がうかがえます。米中央軍は地雷の使用について、コメントを拒否しています。

民間人リスクと国際法上の問題

住宅地への影響

地雷が民間人の居住区域に散布されたことは、深刻な人道上の問題を提起しています。イラン国営メディアによると、少なくとも1名がカファリ村で地雷により死亡し、複数の負傷者が出ています。死亡したのは、地雷を拾い上げた住民であると報じられています。

BLU-91/BおよびBLU-92/B地雷は散布後2分で起動しますが、ごく少数が正常に起爆せず不発弾となる可能性があります。また、自爆タイマー機能が搭載されているものの、散布後数時間から数日後に不規則に爆発する可能性もあり、住民にとって予測不能な危険が長期間にわたって続くことになります。

対人地雷禁止条約との関係

対人地雷の使用を全面的に禁止する「オタワ条約」(対人地雷禁止条約)は1997年に採択され、現在161カ国が加盟しています。しかし、米国はこの条約に署名していません。

バイデン前政権は2022年に朝鮮半島を除く全世界での対人地雷不使用を表明しましたが、2024年11月にはウクライナへの対人地雷供与を承認し、この方針を事実上撤回しました。その後のトランプ政権下では、非持続性地雷の使用に関する地理的制限を撤廃する新たな地雷政策が検討されています。

国際人権団体は、住宅地近傍での地雷使用は数十年にわたる地雷禁止の取り組みに反するものだと強く批判しています。

不発弾処理と停戦交渉への波紋

不発弾処理の長期的課題

散布地雷には自爆機能が搭載されていますが、すべてが確実に作動するわけではありません。過去の紛争地域での経験から、クラスター弾由来の不発弾は長期間にわたって民間人に被害をもたらし続けることが知られています。停戦後のイランにおける不発弾処理は、大きな課題となる可能性があります。

停戦交渉への影響

イランは米国が提示した停戦案を拒否し、ホルムズ海峡の主権を含む5項目の逆提案を行っています。住宅地への地雷散布は、イラン側の交渉姿勢をさらに硬化させる要因となりかねません。一方で、イランのミサイル能力が大きく低下しているとの分析もあり、軍事バランスの変化が今後の交渉にどう影響するかが注目されます。

米国製地雷と民間人保護の課題

イラン南部の住宅地で発見された米国製対戦車地雷は、イランの地下ミサイル基地へのアクセスを遮断するという明確な軍事目的を持っていました。しかし、民間人の居住区域に散布されたことで、少なくとも1名の死者を含む被害が発生しています。

米国はオタワ条約に加盟しておらず、近年の地雷政策も使用制限の緩和方向に動いています。今回の事案は、現代の紛争において民間人保護と軍事的有効性のバランスをどう取るかという根本的な問いを突きつけています。停戦交渉の行方とともに、不発弾処理を含む長期的な民間人保護の枠組みについても、国際社会の関心が求められます。

参考資料:

安
安藤 誠

南アジア・中東情勢

南アジア・中東を中心に、宗教・民族・歴史の深層から国際情勢を分析。長年の現地経験に基づく多層的な視座が持ち味。

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