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NYU非正規教授950人がストライキ決行、待遇と雇用安定を要求

by 村上 詩織
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NYU契約教員950人スト突入の背景

2026年3月23日、ニューヨーク大学(NYU)で非正規雇用の教授約950人がストライキに突入しました。テニュアトラック(終身在職権付き)ではない契約教員で構成される労働組合「Contract Faculty United-UAW(CFU-UAW)」が、賃金引き上げや雇用安定、住宅支援などを求めて授業をボイコットしたのです。

NYUの契約教員はフルタイム教員の約半数を占めながら、テニュア付き教員より平均36%も低い給与で働いています。17カ月に及ぶ交渉が行き詰まる中、春休み明けの月曜日に決行されたストライキは、全米の大学における非正規教員の処遇問題を象徴する出来事として注目を集めています。

ストライキの背景と経緯

契約教員の厳しい現実

NYUでは約950人の契約教員がフルタイムで勤務していますが、その待遇はテニュア付き教員と大きく異なります。同じ教壇に立ち、同等の授業を担当しているにもかかわらず、契約教員の給与はテニュア付き同僚より30〜35%低いのが実態です。

ニューヨーク市の高い生活費を考慮すると、この格差はさらに深刻です。特に住宅費の負担が重く、テニュア付き教員には提供される大学住宅の補助が、契約教員には適用されないケースが多いとされています。

17カ月に及ぶ交渉の難航

CFU-UAWは2024年秋から大学側との団体交渉を続けてきました。交渉は週末にかけて加速し、金曜日時点で合意に至ったのは18項目のみでしたが、月曜朝までに30項目にまで増加しました。しかし、最も重要な賃金・住宅・研究資金に関する合意には至りませんでした。

大学側は助教レベルの最低年俸として9万ドル(約1,350万円)を提示しましたが、組合側は12万ドル(約1,800万円)を要求しています。この3万ドルの差が、交渉決裂の主な要因の一つです。

組合の主要な要求事項

賃金と雇用保障

組合が求めている核心的な要求は多岐にわたります。まず、インフレ率を上回る賃金引き上げです。ニューヨーク市の物価上昇に見合った給与体系の確立が不可欠とされています。

また、雇用の安定性も大きな課題です。契約教員は数年ごとに契約更新の不安にさらされており、より公正な再任用プロセスの整備が求められています。大学のガバナンスへの参加権も重要な要求項目です。

AI規制と新たな課題

注目すべきは、教育におけるAIの不正使用に対する保護措置を求めている点です。生成AIの急速な普及に伴い、AIが教員の仕事を代替するリスクへの懸念が高まっています。契約教員は立場が不安定なため、AI導入の影響を最も受けやすい層と考えられています。

住宅支援と福利厚生

組合は補助付き住宅、住宅ローン支援、障害保険、法律サービス、無料のファイナンシャルプランニングや税務相談なども要求しています。特に住宅問題については、大学側が交渉を拒否したとして組合が仲裁を申し立てる事態にまで発展しています。

大学側の対応と学生への影響

NYUの立場

NYU側は交渉に前向きな姿勢を示しつつも、組合の要求すべてには応じられないとしています。大学は学生向けに、ストライキ中も授業は継続すると発表しました。テニュア付き教員や大学院生による代替授業の実施が計画されています。

大学側は公式ウェブサイトで交渉の経過を公開し、組合との合意事項が着実に増えていることを強調しています。学問の自由、苦情処理手続き、退職支援などの分野では暫定合意に達しています。

地元政治家の反応

ニューヨーク市の複数の選出議員がストライキを支持する声明を発表しています。大学が位置するグリニッジビレッジ地区の地元政治家を中心に、契約教員の待遇改善を求める声が上がっています。

全米大学の非正規教員格差と長期化リスク

今回のストライキは、NYU単体の問題にとどまりません。全米の大学で非正規教員の割合が増加する中、同様の待遇格差問題は各地で顕在化しています。テニュア付きポストの減少と契約教員の増加は、高等教育の構造的課題として長年指摘されてきました。

ストライキの長期化は学生への影響が避けられません。特に学期途中での授業中断は、学業の進捗に直接的な支障をきたす可能性があります。一方で、大学側にとっても、ストライキの長期化は入学志願者への印象やブランドイメージに影響しかねません。

交渉の焦点は賃金の最低基準と住宅支援に絞られつつあり、双方が歩み寄れるかが今後の鍵を握ります。

30項目合意後も残る賃金・住宅問題

NYUでの契約教員ストライキは、賃金格差、雇用不安、AI時代の労働保護など、現代の高等教育が抱える複合的な課題を浮き彫りにしています。約950人の教授が授業をボイコットするという異例の事態は、非正規教員の待遇改善を求める動きが全米規模で広がる可能性を示唆しています。

交渉では30項目の合意が成立していますが、核心的な賃金と住宅の問題は未解決のままです。今後の交渉の行方が、NYUだけでなく全米の大学における教員の労働条件に影響を与える可能性があります。

参考資料:

村上 詩織

移民・難民・教育格差

移民・難民・教育格差など、社会の周縁に置かれた人々の声を丁寧に取材。制度と現実のギャップを浮き彫りにする。

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