NewsAngle
NewsAngle

トランプ盟友がICEを私的利用:親権争いの闇

by 村上 詩織
URLをコピーしました

ザンポッリ氏のICE私的利用疑惑

トランプ大統領の長年の友人であり、現大統領特別使節を務めるパオロ・ザンポッリ氏が、親権争いの最中に移民・関税執行局(ICE)の高官に連絡を取り、元交際相手の拘束を依頼していたことが報じられました。

この事案は、政治的なコネクションを持つ人物が連邦政府の法執行機関を私的な目的で利用した疑いを示すものです。移民政策の厳格化が進むなか、ICEの権限がどのように行使されているのか、そして権力の濫用を防ぐ仕組みは機能しているのかという根本的な問題を提起しています。

パオロ・ザンポッリとは何者か

モデルエージェントからトランプの盟友へ

パオロ・ザンポッリ氏はイタリア・ミラノ出身の元モデルエージェントです。ニューヨークで「IDモデルマネジメント」を設立し、ファッション業界で活動していました。

ザンポッリ氏の名前が広く知られるようになったのは、現在のメラニア・トランプ大統領夫人との関係です。1995年にミラノでモデルのメラニア・クナウスをスカウトし、1996年にH-1Bビザを通じて渡米を支援。1998年のパーティーでメラニアをドナルド・トランプに紹介した人物として知られています。

その後、不動産業に転身し、2011年にはドミニカ国連常駐代表部のミニスター・カウンセラーに就任。2013年には国連大使に任命されるなど、政財界に幅広い人脈を持っています。

大統領特別使節としての立場

現在ザンポッリ氏はトランプ政権の大統領特別使節を務めており、外交政策に関してもトランプ大統領の助言者としての役割を果たしているとされています。この立場が、連邦政府機関への影響力の源泉になったと指摘されています。

事案の経緯

ICE高官への拘束依頼

2025年6月、ザンポッリ氏はICEの上級幹部デイヴィッド・ベンチュレラに連絡を取りました。ザンポッリ氏の元交際相手であるブラジル人女性アマンダ・ウンガロ氏が、詐欺の容疑でマイアミの刑務所に収監されていた時期のことです。

ザンポッリ氏はベンチュレラに対し、ウンガロ氏が不法滞在していること、そして彼女を移民収容施設に入れることが自分の親権獲得に有利になると伝えたとされています。ベンチュレラはその後すぐにICEマイアミ支局に電話し、ウンガロ氏が保釈される前に拘束する手配を行いました。

拘束から国外退去へ

ウンガロ氏はICEの管理下に置かれ、最終的に国外退去処分を受けました。二人の間には10代の息子がおり、この一連の経緯は親権争いの文脈で起きたものです。

各方面の反応と主張

ザンポッリ氏の否定

ザンポッリ氏はインタビューで、ウンガロ氏の拘束を依頼したことも、特別な便宜を求めたこともないと否定しています。単に手続きについて問い合わせただけだと主張しています。

国土安全保障省の声明

国土安全保障省は、ウンガロ氏のビザが期限切れであったことと詐欺の容疑があったことを理由に拘束・退去が正当であったとする声明を発表。「政治的な理由や個人的な便宜のために逮捕・退去されたという主張は誤りである」と述べています。

批判の声

しかし、批判者はICE高官が大統領の友人からの個人的な依頼に基づいて即座に行動したこと自体が問題であると指摘しています。通常の移民執行手続きでは、個人からの通報がICE幹部レベルで直接処理されることはありません。

移民執行機関の権力濫用リスク

構造的な問題

この事案は、移民政策の厳格化が進む中でICEの権限が拡大していることの危険性を示しています。政治的なコネクションを持つ人物が、法執行機関を個人的な紛争の道具として利用できる環境が存在するならば、それは制度の根本的な欠陥です。

家族法の専門家は、親権争いにおいて移民ステータスを武器として使用するケースが増加していると警告しています。DV被害者や不法滞在の親が、子どもの親権を巡る争いの中でICEへの通報という脅威にさらされるリスクが高まっています。

ICE権限行使の透明性と監督課題

この事案についてはまだ調査の途上にあり、全容が明らかになったわけではありません。ザンポッリ氏の主張と報道内容には大きな乖離があり、今後の調査の進展を注視する必要があります。

ただし、ICEの権限行使に関する透明性と監督の仕組みが不十分であるという問題は、この事案に限らず広く指摘されてきました。移民執行機関が政治的影響力から独立して機能するための制度的保障がどうあるべきか、より広い議論が求められています。

親権争いへのICE介入と法執行の独立性

パオロ・ザンポッリ氏の事案は、連邦政府の法執行機関が権力者の私的な目的に利用されうるという深刻な問題を浮き彫りにしています。親権争いという個人的な紛争にICEが介入したとすれば、それは移民執行の本来の目的から大きく逸脱しています。

移民政策を巡る議論が過熱する中で、法執行の公正性と独立性がどのように担保されるべきかは、政治的立場を超えて注目すべき課題です。

参考資料:

村
村上 詩織

移民・難民・教育格差

移民・難民・教育格差など、社会の周縁に置かれた人々の声を丁寧に取材。制度と現実のギャップを浮き彫りにする。

関連記事

H-1B10万ドル手数料無効判決が映す米国司法と大統領権限の限界

米連邦地裁がトランプ政権のH-1Bビザ10万ドル手数料を無効化。税と手数料の線引き、議会権限、行政手続法、教育・医療現場への影響を整理し、DHSの控訴方針や企業の採用計画に残る不確実性を分析。米国で高度人材を採用する企業と日本企業が読むべき、司法が示した移民政策の転換点と実務上の備えを具体的に解説。

IRSとICEの税情報共有問題、移民が申告をためらう構造的背景

IRSとICEの税情報共有問題は、ITINで納税してきた移民の信頼を揺るがしました。2025年のMOU、4万2695件の違法認定、2022年に全米で967億ドル、カリフォルニア州で85億ドルに達した税負担、現在も続く訴訟と移民手続きへの波及を踏まえ、税務と摘発の衝突が申告忌避を広げる構図を解説します。

最新ニュース

AI雇用喪失にUBIは本当に答えか米国実証研究と財源論を読み解く

AIによる雇用喪失への処方箋として注目されるUBI。OpenResearchの米国実験、各都市の保証所得、IMFやILOの雇用分析を照合し、現金給付が生活安定と再訓練を支える一方、財源・住宅費・技能政策だけでは解けない課題を検証する。技術楽観論と現場データの差から、AI時代の所得保障の実装条件を読み解く。

認知症理解はどこまで進んだのかアルツハイマー治療研究の最前線

認知症は一つの病気ではなく、アミロイド、タウ、血管障害、TDP-43など複数の病理が重なる症候群です。血液検査と抗アミロイド薬が診断と治療を変え始める一方、混合病理、予防、介護体制という未解決課題は残る。世界と日本の最新データから現在地を読み解く、新薬の恩恵が限られる理由や、家族と医療者が注視すべき論点も解説。

エリック・プリンスのコンゴ傭兵契約が映す鉱物安保の危うい現実

エリック・プリンス率いるVectus Globalがコンゴ東部で損害を受けたと報じられ、鉱物収入の管理名目だった契約は戦場へ近づいた。M23、ルワンダ、米国の鉱物安保、コバルト供給網、対中競争が交錯する構図から、民間軍事会社に国家機能を預けるリスクと和平の死角、主権への影響と背景構造を詳しく読み解く。

経済ノーベル賞、ホールとウッドフォードが変えた安定化政策の常識

経済ノーベル賞はロバート・ホール氏とマイケル・ウッドフォード氏へ。1970年代のスタグフレーションで揺らいだケインズ政策を、家計の消費判断、企業の価格設定、中央銀行の期待管理から組み直した研究の意味を、FRBの利下げ判断や財政出動、債券市場への含意まで解説。政策モデルの限界と投資家が見るべき論点も読み解く。

米国退職者の所得別社会保障依存と迫る2032年減額危機の実像

米社会保障の老齢・遺族基金は2032年10〜12月期に枯渇し、現行法では給付可能額が78%に下がる見通しです。所得階層ごとの依存度、年金・資産収入との格差、税制・医療費が退職家計へ与える影響を整理。低所得層ほど社会保障が生活の土台となる一方、高所得層は資産・就労収入で補う構図を最新統計で読み解く。