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ミラー氏が静かに進める移民強硬路線の全貌

by 村上 詩織
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ミラー氏の静かな移民強硬路線

トランプ政権の移民政策の「設計者」として知られるスティーブン・ミラー大統領副首席補佐官が、2026年に入り戦略を大きく転換しています。2026年1月のミネソタ州ミネアポリスでの大規模取り締まり作戦「オペレーション・メトロ・サージ」が深刻な社会的混乱を引き起こした後、ミラー氏は表舞台から姿を消しつつも、州議会との連携を軸にした新たなアプローチで移民強硬路線を着実に推進しています。

本記事では、ミラー氏の移民政策がどのように変質し、なぜ「静かな強硬路線」へと移行したのか、その背景と今後の影響を独自に調査した結果をお伝えします。

ミネアポリスの教訓と戦略転換

オペレーション・メトロ・サージの衝撃

2026年1月、国土安全保障省(DHS)はミネアポリス・セントポール都市圏に約2,000人の連邦捜査官を派遣する「オペレーション・メトロ・サージ」を展開しました。これは「史上最大の移民取り締まり作戦」と位置づけられたものです。

しかし、作戦は深刻な問題を引き起こしました。1月7日にはICE捜査官がアメリカ市民の女性を射殺する事件が発生し、全米で抗議デモが広がりました。さらに、ミネソタ州連邦地方裁判所のパトリック・シルツ主席判事は、2026年1月以降だけでICEが少なくとも96件の裁判所命令に違反したと認定しました。また、ジェリー・W・ブラックウェル判事は、ICEが自身の法廷に連行した「圧倒的多数」のケースが合法的に米国に滞在している人々であったと述べています。

経済的・社会的コストの大きさ

NPRの分析によると、オペレーション・メトロ・サージはミネアポリスに甚大な経済的損害をもたらしました。地元企業は売上の50〜80%減少を報告し、住民が取り締まり強化を恐れて外出を控えたことが主因とされています。この経済的打撃は、強硬な取り締まり手法の持続可能性に疑問を投げかけるものとなりました。

作戦は2月に終了しましたが、3月初旬の時点でも約650人のICE職員がミネソタ州に残留していたとされています。

「静かな取り締まり」への移行

中間選挙を見据えた方針転換

2026年3月下旬、トランプ大統領は移民政策の新たなアプローチを模索しているとの報道が出ました。スージー・ワイルズ大統領首席補佐官は、強制送還プログラムが2026年中間選挙に向けて政治的負債になりかねないと警告したとされています。ホワイトハウスは「大量強制送還」という表現を避け、「悪人を追跡する」というメッセージに切り替える方向に動いています。

実際に、2月のICE逮捕件数は前月比で1日あたり約11%減少しました。特に犯罪歴のない移民の逮捕が減少し、逮捕件数は前年9月以来の最低水準に落ち込んでいます。

地方警察への権限移譲

NPRの2026年4月の報道によれば、ICEはミネソタ作戦のような大規模で目立つ作戦から、地方警察との連携に重点を置いた「より見えにくい」手法へと移行しています。連邦政府は地方法執行機関に対し、ICEとの連携協定(287(g)協定)を締結するよう積極的に働きかけており、訓練を受けた職員の給与・福利厚生・残業代の補償に加え、新しい装備や車両の購入資金を提供するなどのインセンティブを用意しています。

批判者は、この「静かな取り締まり」がかえって監視の目を逃れやすくなり、権利侵害のリスクが高まると懸念を示しています。

州議会を通じた制度化の動き

テネシー州の「Immigration 2026」パッケージ

ミラー氏の戦略で注目すべきは、州レベルでの法制化を通じた移民政策の制度的定着です。テネシー州では、ミラー氏との数か月にわたる緊密な協議を経て、「Immigration 2026」と名付けられた法案パッケージが提出されました。

この法案群には、最終的な強制送還命令から90日以内にテネシー州を離れない不法滞在者を軽犯罪として処罰する法案、全地方法執行機関にICEとの287(g)協定締結を義務づける法案、医師・教師・地方法執行機関に対し移民のステータスを州議会に報告することを義務づける法案、全州・地方政府機関にE-Verifyシステムの使用を義務づける法案などが含まれています。

全米への波及を目指すモデルケース

テネシー州の法案は「全米のモデル」として位置づけられています。キャメロン・セクストン州下院議長とミラー氏の間で交わされた一連の協議が法案の骨格を形成したとされており、他州への展開を前提とした設計であることがうかがえます。

連邦レベルでも、下院司法委員会がミラー氏と連携して「Immigration 2026」関連法案を審議しており、州と連邦の両面から移民規制の法的基盤を固める戦略が進んでいます。

ミラー氏のイデオロギーと長期ビジョン

1965年移民法への批判

ミラー氏の思想的背景を理解するうえで重要なのが、1965年移民法(ハート・セラー法)に対する批判です。CNNの報道によれば、ミラー氏はこの法律がアメリカの人種構成を変え、「第三世界」からの移民を増加させたと主張しています。1920年代の厳格な出身国別クォータ制度が好ましかったとの見解を示しているとされています。

法的枠組みの根本的変更を志向

ミラー氏の政策目標は、国境取り締まりの強化にとどまりません。出生地主義による市民権の廃止、亡命制度の解体、合法移民の制限など、移民に関する法的枠組みそのものの変革を目指しています。さらに、公立学校が移民の子どもの入学を拒否することを禁じた1982年の最高裁判決「プライラー対ドウ」の見直しも視野に入れているとされています。

州制度化と2026年中間選挙の焦点

ミラー氏の戦略転換について、いくつかの重要な点に注意が必要です。

まず、「静かになった」ことは「後退した」ことを意味しません。表面的な取り締まり強度の低下は、州レベルでの制度化という、より持続的な手法への移行を反映しています。一度法律として成立した規制は、政権交代後も簡単には覆せないため、むしろ長期的には影響力が強まる可能性があります。

次に、2026年中間選挙が大きな転換点になります。選挙結果次第では、ミラー氏の路線がさらに加速するか、あるいは議会の構成変化によって制約を受けるかが決まります。ホワイトハウスがメッセージ戦略を修正している背景には、この政治的計算があります。

また、司法の役割も引き続き重要です。ミネソタ州での裁判所命令違反の認定や、各地での訴訟は、政権の移民政策に対する法的歯止めとして機能し続けています。

大規模作戦後も続く移民制限の浸透

スティーブン・ミラー氏は、ミネアポリスでの混乱を経て、より目立たない形で移民強硬路線を推進する戦略に切り替えました。大規模な連邦作戦から、地方警察との連携強化、州レベルでの法制化、そして連邦議会での法案審議へと、活動の軸足を移しています。

その本質的な目標、すなわち移民の大幅制限と既存の法的枠組みの変革は変わっていません。表舞台での発信は控えめになりましたが、政策の浸透は着実に進んでいます。今後の中間選挙と司法判断が、この路線の行方を大きく左右することになるでしょう。

参考資料:

村上 詩織

移民・難民・教育格差

移民・難民・教育格差など、社会の周縁に置かれた人々の声を丁寧に取材。制度と現実のギャップを浮き彫りにする。

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