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テキサスICE拘束で子どもが兄弟の世話役に

by 村上 詩織
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テキサスICE拘束で広がる子どもの保護者役

米国の移民・関税執行局(ICE)による取り締まり強化が続くなか、テキサス州を中心に親が拘束された後、残された子どもたちが兄弟の世話を担うケースが相次いでいます。親を失った家庭では、10代の若者が突然「保護者」としての役割を引き受けざるを得ない状況が広がっています。

ProPublicaの調査によると、トランプ政権の第2期が始まってからの7か月間で、少なくとも1万1,000人の米国市民の子どもの親がICEに拘束されました。1日平均50人以上の米国市民の子どもが親を失っている計算です。こうした数字の裏側には、恐怖と責任のなかで日常を維持しようとする子どもたちの姿があります。

本記事では、テキサス州で起きている家族分離の実態と、子どもたちが直面している課題について、複数の報道をもとに解説します。

親の拘束後に家庭を支える子どもたち

突然の「保護者」役を担う若者

テキサス州ウェーコに住むクリスティーナ・メヒアさん(21歳)は、2026年1月に母親がICEに拘束されて以来、18歳と5歳の弟2人の世話を一手に引き受けています。地元メディアKWTXの報道によると、メヒアさんは家計の管理から日々の育児まで、すべてを担うことになりました。最もつらいのは母親がいない生活そのもので、「母が家にいる夢を見て目が覚めると、もういないことに気づく」と語っています。

こうした事例はウェーコだけにとどまりません。ミシガン州では、未亡人の父親がICEに拘束された後、長女が大学進学を断念し、3人のきょうだいの面倒をみる決断をしたと報じられています。また、15歳の少年が母親の逮捕後、8歳と9歳の弟2人と3人だけで生活するケースも確認されています。

子どもたちの心理的負担

親の拘束は、子どもたちに深刻な心理的影響を及ぼしています。CNNの報道では、ある家庭で母親が定期出頭の際にそのまま拘束されたケースが紹介されています。残された幼い弟は「学校に行っている間に家族がいなくなるのではないか」と恐れ、登校を拒むようになりました。

学術研究でも影響の深刻さが裏付けられています。2020年に発表された調査では、オハイオ州、テキサス州、ミシシッピ州で行われた職場摘発後、逮捕された労働者の子どもたちにPTSD(心的外傷後ストレス障害)の兆候が確認されました。睡眠障害、頻繁な泣き声、強い恐怖心などが主な症状として報告されています。

拡大する家族分離の規模

1万1,000人超の米国市民の子どもに影響

ProPublicaがワシントン大学人権センターを通じて取得したICEデータの分析によると、トランプ政権下では米国市民の子どもを持つ親の拘束率がバイデン政権の約2倍に達しています。特に母親の強制送還率は約4倍に増加しており、逮捕された母親のうち約60%が強制送還に至っています。バイデン政権下では約30%でした。

マーシャル・プロジェクトの報道では、ICEが家族に強制送還の時期をほとんど知らせず、準備の時間もほとんど与えないまま手続きを進めていることが指摘されています。弁護士がクライアントとの面会を制限されるケースも報告されています。

里親制度への圧力

親がICEに拘束された後、里親制度に入る子どもも増加しています。Stocktonia Newsの報道によると、7州の当局者が少なくとも32人の子どもが親の拘束または強制送還後に里親制度に入ったことを確認しています。ただし、連邦政府は親の拘束後に州の保護下に入る子どもの包括的なデータを持っていないのが現状です。

ブルッキングス研究所の分析では、移民政策研究所(MPI)の推計として、不法滞在の親を少なくとも1人持つ子どもが全米で600万人以上おり、そのうち530万人が米国市民であることが示されています。これらの家庭すべてが家族分離のリスクにさらされています。

テキサス州における拘束の実態

ディリー拘留施設の問題

テキサス州サンアントニオから約120キロ南にあるディリー移民処理センターは、家族を収容する施設として注目を集めています。2025年3月の再開以降、約3,500人が収容され、その半数以上が子どもです。

NBCニュースの報道によると、施設内の子どもたちは悪夢にうなされ、食事は不適切で、十分な教育も受けられない環境にあります。テキサス・トリビューンが報じた家族からの手紙では、16歳の少年が拘留中に約9キログラム体重が減少し、食事にカビや虫を見つけたと訴えています。5歳の女児の虫歯13本が放置されているケースも報告されました。

NBCダラス・フォートワースの調査報道では、連邦裁判所が定めた20日間の上限を超えて拘留されている子どもが数百人に上ることが明らかになっています。

混合在留資格家庭への影響

テキサス州では約83万4,000人の子どもが不法滞在の親と暮らしており、これは州内の子ども全体の約10人に1人にあたります。KWBUの報道では、エルパソなどの国境都市で、混合在留資格を持つ家庭がICEの取り締まり強化を受けて日常生活を大きく変えている様子が伝えられています。ある家族は、グリーンカード保持者と米国市民が混在する6人家族で、移民当局の監視を恐れて行動パターンを変えていると報じられています。

親指令変更と所得70%減の長期影響

政策面の変化

ProPublicaの報道によると、かつて「親の利益に関する指令」(Parental Interests Directive)と呼ばれていた文書は、トランプ政権下で「拘留中の親に関する指令」(Detained Parents Directive)と名称が変更されました。以前は移民の親を「人道的に」扱うよう指示する前文がありましたが、「人道的」という文言が削除されたと報じられています。

長期的な社会影響

親の拘束や強制送還が子どもに与える影響は、心理面にとどまりません。過去の研究では、移民の親が逮捕・拘束・強制送還された後、家庭の収入が6か月以内に40%から90%減少し、平均で70%の所得が失われるとされています。教育面でも、地域での強制送還が増加すると、白人とラテン系の生徒の間で数学の成績や慢性的な欠席率の格差が拡大する傾向が報告されています。

今後もICEによる取り締まりが継続する場合、親を失った子どもたちへの支援体制の整備が急務となります。特に、突然保護者の役割を担うことになった未成年者への経済的・心理的支援の仕組みが求められています。

1万1,000人超の米国市民児童への支援課題

テキサス州を中心に、ICEによる親の拘束後に子どもたちが兄弟の世話を担うケースが深刻化しています。ProPublicaの調査では1万1,000人以上の米国市民の子どもの親が拘束されており、1日平均50人以上の子どもが影響を受けています。

21歳の若者が弟2人の面倒をみるケースや、10代の少年が幼いきょうだいと3人で暮らすケースなど、個別の事例からは数字だけでは見えない現実が浮かび上がります。里親制度の逼迫、子どもの心理的トラウマ、家庭の経済的崩壊など、影響は多方面に及んでいます。混合在留資格家庭の子どもたちへの包括的な支援体制の構築が、喫緊の課題といえます。

参考資料:

村上 詩織

移民・難民・教育格差

移民・難民・教育格差など、社会の周縁に置かれた人々の声を丁寧に取材。制度と現実のギャップを浮き彫りにする。

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