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「No Kings」抗議運動3回目の課題と今後の行方

by 長谷川 悠人
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全米3300超No Kingsの規模と試金石

2026年3月28日、全米50州で3300以上の「No Kings」抗議イベントが開催されました。3回目となる今回の抗議運動は、主催者が「米国史上最大の国内政治抗議」と位置付ける規模となり、900万人以上の参加が見込まれていました。しかし、動員数の拡大だけで効果的な政治運動として成立するのかという問いが、運動の内外から突きつけられています。

トランプ政権の支持率が歴史的低水準に沈む中、進歩派の組織力は街頭で証明されつつあります。一方で、この巨大な抗議のエネルギーを具体的な政策変更や選挙結果に結びつけられるかどうかが、運動の真価を問う試金石となっています。

No Kings運動の軌跡と第3回の規模

3回にわたる抗議の拡大

No Kings運動は2025年6月14日に第1回が開催されました。この日はトランプ大統領の79歳の誕生日であり、米陸軍創設250周年パレードと同日でした。主催者推計では2100以上の都市・町で500万人以上が参加したとされています。

第2回は2025年10月18日に実施され、ハーバード大学のCrowd Counting Consortiumの調査によれば、2700以上のイベントで推定500万〜700万人が参加しました。いずれの数字であっても、米国史上最大規模の1日抗議行動の一つとされています。

そして第3回となる2026年3月28日は、3300以上のイベントが計画され、主催者は900万人以上の参加を見込んでいました。回を重ねるごとにイベント数・参加者数ともに拡大しており、運動の勢いは衰えていないことがうかがえます。

ミネソタ州での旗艦イベント

第3回の象徴的なイベントは、ミネソタ州セントポールの州議会議事堂前で開催されました。ブルース・スプリングスティーンが「Streets of Minneapolis」を演奏し、会場には推定20万人以上が集まったとされています。フォークの伝説ジョーン・バエズ、シンガーソングライターのマギー・ロジャース、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリスト、トム・モレロも出演しました。ミネソタ州のティム・ウォルツ知事やバーニー・サンダース上院議員も登壇しています。

ミネソタが旗艦会場に選ばれた背景には、同州で発生した連邦捜査機関(ICE)によるレネー・グッドとアレックス・プレッティという2人の米国市民の死亡事件があります。参加者の多くがこの2人の名前を掲げたプラカードを持ち、移民政策への抗議の意思を示しました。

運動を支える組織と構造

全国組織と草の根の連携

No Kings運動の全国レベルでの推進力となっているのは、Indivisible、50501、MoveOnといった進歩派団体です。しかし、各地の抗議イベントは地元の市民権団体、労働組合、宗教コミュニティ、教育・気候変動・銃規制・移民問題に取り組むNPOなど、数百の団体による連合体が組織しています。

「No Kings」自体は独立した組織ではありません。全国的な進歩派団体が寄付を募り、トレーニング、デジタルツール、マーケティング支援を提供する形で各地の活動を支えています。Indivisibleの共同創設者エズラ・レヴィンやリア・グリーンバーグが全国レベルの調整役を担い、ニューヨーク市のハンナ・シュタウスのような地方の主催者が各都市のイベントを運営するという分散型の構造です。

都市部を超えた広がり

注目すべきは、イベントの約3分の2が大都市圏の外で開催された点です。アイダホ州ドリッグス(人口2000人未満)のような小さな町でも集会が開かれ、保守寄りの州でのイベント登録も急増しました。フィラデルフィアで約4万人、サンディエゴでも約4万人が行進するなど、主要都市での動員も健在です。ニューヨークのタイムズスクエア、ワシントンD.C.のメモリアルブリッジ、ロサンゼルス、ポートランドなどでも数万人規模のデモが行われました。

「数」だけで十分か——運動が直面する課題

政治的成果への懐疑

運動の規模が拡大する一方で、専門家からは厳しい指摘も出ています。進歩派は大規模な抗議行動の動員には長けているものの、保守派と比較すると、政策変更を実現するための地方インフラの構築では後れを取っているという見方があります。

一部の主催者は、No Kings運動が2011年のウォール街占拠運動(Occupy Wall Street)の二の舞になることを懸念しています。Occupyは大きな注目を集めたものの、持続的な政策変更にはつながらず、「問題の解決方法に合意がない分裂した運動」として記憶されています。単発のイベントの積み重ねだけでは、政治的変革に結びつかないという「伝統的な批判」が、No Kings運動にも向けられています。

ボイコットと多角的戦略の模索

研究者の間では、抗議運動が政府の政策変更を求める場合、デモの規模拡大よりも、政権の政策を支持する企業へのボイコットに重点を置く方が効果的だという指摘もあります。街頭での存在感を示すだけでなく、経済的な圧力を組み合わせた多角的なアプローチが求められているのです。

2026年中間選挙に向けた展望

抗議から選挙へのパイプライン

Indivisibleをはじめとする団体は、No Kings運動のエネルギーを2026年中間選挙に向けた政治的行動に転換することを目指しています。Indivisibleは同団体史上最大規模の民主党予備選プログラムを立ち上げました。Movement Voter Projectは2段階のアプローチを採用し、2026年6月までの第1フェーズでMAGA政策への反対を組織化し、共和党議員の責任を追及する基盤を構築。7月から11月の第2フェーズで、有権者の怒りを下院逆転につなげる「ブルーウェーブ」選挙を目指すとしています。

トランプ政権の支持率低下という追い風

No Kings運動にとって追い風となっているのが、トランプ大統領の支持率の低迷です。Silver Bulletinのデータによれば、純支持率はマイナス16.7ポイントと2期目の最低を記録しています。物価・インフレへの対応に関する純支持率はマイナス39ポイントに急落し、個別政策としては世論調査史上最悪の数値とされています。イラン戦争やガソリン価格の上昇が支持率低下を加速させており、この状況は抗議運動の正当性を補強する材料となっています。

No Kingsを2026年中間選挙へつなぐ課題

No Kings運動は3回目にして全米3300以上のイベント、推定数百万人の参加者を動員し、米国の抗議運動史において特筆すべき存在となりました。しかし、運動の真の課題は「次に何をするか」にあります。街頭での数の力を、地方レベルの組織化、ボイコットなどの経済的圧力、そして2026年中間選挙での投票行動に転換できるかどうかが、No Kings運動が一過性の現象で終わるか持続的な政治変革の起点となるかを決めることになるでしょう。

進歩派組織はすでに選挙に向けた準備を進めており、Occupy Wall Streetの教訓を生かそうとする意識も見られます。トランプ政権の歴史的な不人気という状況を活かし、抗議のエネルギーを具体的な政治的成果に結びつけられるか——その答えが出るのは、2026年11月の中間選挙です。

参考資料:

長
長谷川 悠人

米国政治・外交

米国政治の内幕を、ホワイトハウスから議会まで多角的に分析。政策決定のプロセスと日本への影響を鋭く読み解く。

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