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トランプ大統領が農家向け融資保証を発表、関税と戦争で苦境の農業

by 三浦 愛子
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トランプ農家融資保証と二重苦の背景

2026年3月27日、トランプ大統領はホワイトハウスの南芝生で「偉大なアメリカ農業祝典(Great American Agriculture Celebration)」を開催し、数百人の農家、牧場主、農業関連企業の幹部を招きました。この場で発表されたのが、農家や食品供給業者向けの新たな融資保証策です。

背景にあるのは、関税政策とイラン戦争という二重の打撃です。米国の農業経済はここ数年、パンデミック後のインフレ、金利上昇、サプライチェーンの混乱に苦しんできました。そこに新たな関税による輸入コストの上昇と、イラン戦争に伴う肥料価格の高騰が追い打ちをかけています。

本記事では、今回発表された農家支援策の具体的な内容と、その背景にある農業経済の課題、そして今後の見通しについて解説します。

融資保証策と農業支援パッケージの全容

SBA融資保証の仕組み

今回の中核的施策は、米国中小企業庁(SBA)が管理する新たな融資保証プログラムです。対象は幅広く、野菜・穀物・種子農家、牛・豚・鶏・卵の生産者、さらに食品卸売業者にまで及びます。

ホワイトハウス高官によると、保証率は最大約90%まで引き上げられる見通しです。これにより、利益率が低下し資金調達が困難になっている農家が、金融機関からの融資をより受けやすくなることが期待されています。

ディーゼル排気液センサー要件の撤廃

EPA(米国環境保護庁)は、ディーゼル排気液(DEF)センサーの要件を撤廃すると発表しました。SBAの推計によると、この規制緩和は農家に年間44億ドル、米国全体では年間約138億ドルの節約効果をもたらすとされています。農業機械の維持コストを直接的に削減する措置として注目されています。

E15エタノール燃料の通年販売

EPAは緊急燃料免除措置を発行し、通常は夏季にスモッグ懸念から販売が制限されるE15(エタノール15%混合ガソリン)の全国通年販売を許可しました。2026年5月1日から適用開始予定で、トウモロコシや大豆の農家にとってはエタノール需要の拡大による農産物価格の下支えが期待されます。

再生可能燃料基準の引き上げ

EPAは再生可能燃料基準(RFS)の「セット2」規則を最終決定し、2026年と2027年の再生可能燃料の使用量要件をプログラム開始から20年間で過去最高水準に設定しました。これもトウモロコシなどバイオ燃料原料を生産する農家にとって追い風となります。

農業経済を圧迫する二重の危機

関税による構造的コスト増

関税政策は農業に複合的な打撃を与えています。Farm Progressの報道によると、農業関連の輸入品にかかる関税収入は10月までに9億5,800万ドルに達しましたが、その内訳は農業機械が5億3,000万ドル、農薬が2億7,300万ドル、肥料が1億1,000万ドル、種子が4,400万ドルとなっています。しかし、農家や資材供給業者が負担した実際のコスト増は、この関税収入をはるかに上回るとされています。

さらに深刻なのが輸出市場の喪失です。中国は関税への対抗措置として農産物の購入先を他国にシフトし、米国の大豆輸出は大きな打撃を受けました。アメリカン・ファーム・ビューロー連盟(AFBF)によると、2025年には作物農家全体で346億ドルの損失が発生しています。

イラン戦争が引き起こす肥料危機

2026年のイラン戦争はホルムズ海峡の通行を事実上封鎖し、世界の石油の5分の1、肥料の3分の1が通過するこの要衝を遮断しました。NPRの報道によれば、春の播種シーズンを前に、肥料サプライチェーンに深刻な混乱が生じています。

尿素肥料の価格は2月下旬から3月中旬にかけて約25%上昇し、1トン当たり75〜100ドルの値上がりとなりました。肥料協会(The Fertilizer Institute)は、今春米国の農家が約200万トンの尿素不足に直面すると予測しています。

こうした状況が農家の経営を圧迫し、破産の増加や離農につながっています。AFBFによれば、2017年以降、全米で17万5,000以上の農場が失われました。

批判と構造的課題

「自ら問題を作り、援助する」との指摘

民主党全国委員会(DNC)はトランプ政権の農家支援策を厳しく批判しています。「農家は市場の喪失、コストの上昇、先行き不透明感を背負わされている」とし、そもそも政権の関税政策やイラン戦争が農家の苦境を生み出したと主張しています。

富裕農家への偏り

Fortuneの報道によると、支援金の大部分は中西部や南部の大規模穀物農家に流れており、トウモロコシ農家に約43億ドル、大豆農家に25億ドル、小麦農家に19億ドルが配分される見込みです。小規模農家や特殊作物の農家には恩恵が届きにくいとの指摘があります。また、純資産15億ドル以上の農業経営者でさえ連邦作物保険の補助金を受け取っているケースが報告されています。

農業法案の行方

トランプ大統領はイベントで「農業法案は実現する」と宣言しました。下院農業委員会は3月5日に2026年農業法案(Farm, Food, and National Security Act of 2026)を34対17の超党派投票で可決しています。現行の農業法案は2018年に制定され、3度延長された後、2026年9月30日に失効予定です。上院での審議が今後の焦点となります。

関税15%継続と上院農業法案の焦点

今回の支援策は短期的な資金繰り改善には有効ですが、関税政策の見直しやイラン戦争の終結がなければ、根本的な問題解決にはならないとの見方が強まっています。最高裁が多くの関税を違憲と判断した後もトランプ大統領は1974年通商法第122条に基づく新たな関税を発動し、包括関税率を15%に引き上げました。貿易政策の先行き不透明感は依然として農家の投資判断を鈍らせています。

一方、E15の通年販売許可や再生可能燃料基準の引き上げは、バイオ燃料産業を通じて農産物需要を底上げする可能性があります。農業法案が上院を通過すれば、リスク管理ツールの強化や信用へのアクセス拡大など、より構造的な支援も期待できます。

SBA融資保証と輸出喪失が残す課題

トランプ大統領が発表した農家支援策は、SBA融資保証、DEFセンサー要件の撤廃、E15通年販売許可、再生可能燃料基準の引き上げなど多岐にわたります。関税政策とイラン戦争の二重苦に直面する米国農業にとって、資金繰りの改善やコスト削減に一定の効果が見込まれます。

しかし、輸出市場の喪失や肥料価格の高騰といった構造的課題は依然として残っており、支援金が大規模農家に偏る問題も指摘されています。今後は農業法案の上院審議の行方や、貿易政策の動向が米国農業の将来を大きく左右することになるでしょう。

参考資料:

三
三浦 愛子

米国経済・金融市場

米国経済の構造変化を、金融市場・財政政策・産業動向の三軸で分析。ウォール街と実体経済のギャップを見抜く。

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